トランプが息巻く「追加関税」世界経済への影響度 BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏に聞く
東洋経済オンライン / 2024年11月27日 8時0分
2つ目に移民規制の強化については、この2~3年、バイデン政権下で移民が入ってきていたから労働需給が緩んでインフレも落ち着いてきていたわけですが、移民を抑制するということになると、これまたインフレ率を押し上げるということになります。
そして3つ目ですけれども、関税強化、特に中国に6割も関税をかける、あるいは同盟国を含めてすべてに10~20%の関税をかけるということになると、よその国からの商品を値上げするということになりますから、これもインフレ率を高めるということになる。
そうなると、FRBが利下げをストップするということだけでなくて、政策が本格化したときに利上げのリスクが出てくるということもあります。
トランプ氏は「ディールの人」
ただここで確認しておかないといけないのは、基本的にトランプ氏はディールの人です。
われわれが恐れているのは、中国にそうとうな関税をかけるということになると、中国経済が悪化する。そうすると日本も東アジアの国もヨーロッパも中国に輸出しているところがダメージを被る。
アメリカ自身も返り血を浴びるリスクもあるんですが、トランプ氏にとって(関税は)基本的にディールの材料なので、例えば、習近平国家主席がアメリカからの輸入を大量に増やすということになれば、関税はかけませんということになるんですね。
――トランプ氏がやろうとしていることが実行されれば、基本的に経済はインフレの方向に進むということですね。一般にインフレというと悪い印象がありますので、景気が悪くなるんじゃないかという気がしますが、河野さんの見立てでは、アメリカ経済は悪くなるというわけでもない?
ここは詳しく説明をしておくと、日本のような国が関税をすごく上げると、物価高になって経済が回らなくなりますよね。
アメリカの場合はそうとう経済規模が大きいので、輸入を抑制してその需要が国内財に向かえば、むしろ国内景気をサポートすることになるので、直ちに大きく悪化するということはないかと思われます。
ただ、そうはいっても割高な商品を買わないといけないということに企業がなってくれば、それはうまく回ってこないので、成長が鈍化するということは間違いなくあるでしょうね。
――そうすると、今後4年間のアメリカ経済は単純にはいかなそうですね。
そうですね。ここで1つお話ししておかないといけないのは、実はちょっと発射台が高まっている可能性があるということなんですよ。
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