中国企業の南米「リチウム資源投資」ブームに変調 供給過剰で採算見込めず、撤退や延期が相次ぐ
東洋経済オンライン / 2024年11月28日 18時0分
ここ数年、世界的なEV(電気自動車)シフトを背景に関連する鉱物資源への注目が高まり、リチウム資源が豊富な南アメリカで多数の中国企業が開発権益の買収を競った。だが、その後のリチウム相場の低迷やEVシフトの失速を受けて、中国企業の投資熱は急速に冷めつつある。
ステンレス鋼大手の青山控股集団は2024年10月、アルゼンチンのリチウム塩湖の資源開発プロジェクトから撤退した。同社は開発権益の49.9%を保有していたが、それを6億9900万ドル(約1074億円)で共同開発のパートナーだったフランスの鉱山会社エラメットに売却した。
青山控股集団の撤退は唐突だったため、業界関係者の驚きを誘った。しかし実際には、同社は南アメリカのリチウム投資案件の見直しを迫られている数多くの中国企業の1社にすぎない。
リチウム相場は9割暴落
中国企業の目算が狂った最大の要因は、リチウム相場の予想を超える落ち込みだ。リチウム資源の新規開発プロジェクトが相次いで生産段階に入ったところで、欧米や中国の自動車市場でEVの販売の伸びが鈍化し、リチウムの大幅な供給過剰が生じてしまった。
リチウムイオン電池の主原料の1つである炭酸リチウムの市場価格は、2022年10月のピークから9割近くも暴落。2024年10月8日時点の取引相場は1トン当たり7万7300元(約166万円)に低迷している。
それだけではない。南アメリカでのリチウム資源開発には莫大な先行投資が必要であり、現地の厳しい環境規制もクリアしなければならない。(投資のリターンが得られない)建設期間が長期化する中、(中国経済の減速の影響などで)中国企業の投資余力が縮小していることも、見直しの要因になっている。
中国の資源開発大手の紫金鉱業は、10月18日に開示した2024年7~9月期の決算報告書の中で、同四半期に予定していたアルゼンチンのリチウム塩湖での生産開始時期を2025年に延期したことを明らかにした。
南アメリカのリチウム資源をあてにしたEVメーカーの投資も変調をきたしている。中国のEV最大手の比亜迪(BYD)は2023年4月、チリの現地法人がチリ政府から「リチウム生産企業」のライセンスを取得。年間約1万2500トンの炭酸リチウムを2030年まで優遇価格で調達する権利を得た。
その見返りとして、BYDはリン酸鉄系リチウムイオン電池の正極材料の工場をチリに建設することを約束した。しかし財新記者の取材によれば、この工場の建設は目下ストップしている。
厳しい気候や環境規制も壁に
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