「持たない暮らし」が人間本来の生き方である理由 定住や所有のない「第2のノマディズム時代」
東洋経済オンライン / 2024年11月29日 11時30分
総合地球環境学研究所所長で霊長類学者の山極壽一氏は、多拠点生活やシェアリングエコノミーなどにより、定住も所有もしない狩猟採集民のような暮らしが可能になり、争いのないより良い世界をつくることができるかもしれないと言います(写真:cba/PIXTA)
友だちの数、生産性の高いチームのメンバー数、縦割り化する会社の社員数……。これらの人数は、進化心理学者のロビン・ダンバーが発見した「ダンバー数」や「ダンバー・グラフ」に支配されている。古来人類は、「家族」や「部族(トライブ)」を形作って暮らしてきたからだ。
メンバー同士が絆を深め、信頼し合い、帰属意識をもって協力し合う、創造的で生産性の高い組織を築くためには、このような人間の本能や行動様式にかんする科学的な知識が不可欠である。日本語版が2024年10月に刊行された『「組織と人数」の絶対法則』について、霊長類学者の山極壽一氏に話を聞いた。4回にわたってお届けする(第1回はこちら、第2回はこちら、第3回はこちら)。
多業兼業・多地域居住時代へ
これからは「多業兼業・多地域居住時代」の人類が、どんどん増えていくと僕は考えています。
【写真で見る】5, 15, 50, 150・・・・・・ この数字に秘められた「すごい力」がわかる本
今は定住していますから、地域の住民票を持ち、そこで選挙の投票もします。しかし、ベンチャーで活躍している人をはじめとして、3~4地域に拠点を持って暮らしている人々も増えています。
例えば、東京で暮らしている人が、新型コロナを契機にして、長野に拠点を移したり、一時的な拠点を持ったりして、両方の地域で暮らしている。
住民票は東京にあっても、実際の行動は、1年のうち1ヵ月、あるいは半年程度を軽井沢や鎌倉、北海道などで過ごすという人が結構いるのです。
つまり、属するコミュニティは1つではなく、他の地域のコミュニティにも同時に属しているということになります。
自分が所属するグループは2つあってもよく、1つの場所に縛られるのでなく、自分を中心にして考えてみてもよいだろうと思います。
地域共同体は150人ぐらいです。つまり、1年に1度会えばよい規模の集団なのですから、いろんな場所に、いくつも属するコミュニティがあってもいいわけです。
コミュニティを渡り歩いたり、同時に連絡を取り合ったりして生きるのが、この情報通信革命の時代でもあるでしょう。
ダンバー数をうまく読み込んで、自分にとって、どういう規模の集団がいくつあればいいのかを考える。そのようにこれからの時代を生き抜いていくというアイデア、デザインが必要になるのではないでしょうか。
第2のノマディズム時代
『「組織と人数」の絶対法則』には言及されていませんが、現代は、人々が移動する時代になりました。僕はこれを「第2のノマディズム」と言っています。
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