湘南美容が米国で上場、急拡大の美容医療市場 「切らない施術」が広がり大手チェーンが隆盛
東洋経済オンライン / 2024年11月29日 7時50分
日本各地で深刻化している医師不足。しかし、日本国内の医師数は増え続けている。いったい何が起きているのか。『週刊東洋経済』11月30日号の第1特集は「医者・医学部 崖っぷち」だ。医師不足をはじめとした診療現場を取り巻く現実、その一方で盛り上がりを見せる美容医療、さらに医学部の最新事情を取り上げる。
9月、湘南美容クリニックを展開するSBCメディカルグループホールディングス(SBC・HD)がアメリカのナスダック市場に上場した。
美容医療グループとしては日本最大で、売上高は1億9354万ドル、純利益は3900万ドル(2023年12月期)。日本の株式市場では医療法人の上場が認められておらず、アメリカ上場でさらなる拡大を図る。
代表の相川佳之氏は日大医学部卒の54歳。2000年に美容クリニックを開業し、1代で現在の地位を築いた。2000年代初頭までの美容整形市場を開拓した大塚美容形成外科や高須クリニックなどの経営者より1世代若い。
2000年代以降、美容医療の主流は、皮膚疾患用の治療機器を用いたシミ・たるみ治療や、ボトックスなどの注射による治療にシフトしていく。つまり「切らない施術」が広がっていった。
折しも2009年には品川美容外科で脂肪吸引手術を受けた女性が死亡する事故もあり、メスを使わない施術の人気が高まった。日本美容外科学会(JSAPS)の調査によると、美容医療では非外科的な手技が施術のメインになっており、今では約9割を占める。
現在、こうした「切らない施術」を安価に提供することを武器に、美容クリニックやエステティックサロンが全国展開している。その先駆けといえるのが相川氏のSBCである。
急拡大の市場
美容医療、エステ市場においてコロナ禍は大きな転換点になった。
医療行為ではないが、コロナ禍以前に美容領域で頭角を現していた業態の1つに脱毛サロンがある。初めに前受金を新規客から取り運転資金に充てる仕組みだが、コロナ禍で利用者数が激減し、資金繰りが悪化。脱毛サロン「銀座カラー」の運営会社であるエム・シーネットワークスジャパンは債務超過に陥り、2023年12月に破綻した。
他方、人と会う機会が減ったことで「今ならダウンタイム(術後に起きる痛みや内出血などが回復し、日常生活に戻るまでの期間)を気にせずに済む」と美容医療の施術を受ける人は増加した。
JSAPSの調査によると、2022年の施術数は2年前の2.2倍。繁華街や駅前など立地のよい店舗スペースがコロナ禍で空き、美容クリニックは出店攻勢をかけることができた。そうして店舗数を増やしたのが冒頭で紹介したSBC・HDや、業界2位のTCB東京中央美容外科である。
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