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「生ドーナツの行列」を嘲笑う人が知らない"真実" むしろ行列は「そこに滞在できる権利」に

東洋経済オンライン / 2024年11月29日 8時40分

「お金よりも時間が大事な人」にとっては有難いサービスとなり、飲食店にとってもプラスの収益を上げられるのがメリットだ。

ただ、「ヨコクラストアハウス」では連日行列ができているにもかかわらず、こうしたツールは導入しておらず、現状の行列の解消を特段の急務とは考えていないように見える。

もちろん、スピーディーで無駄のない調理や丁寧な接客から、お客に極力ストレスを与えないようにしている店の配慮は最大限に伝わってきた。

「ヨコクラストアハウス」は目立つような看板を掲げていないためか、行ったことのない近所の人からは店名を認知されていないことも多いようだ。ただ、「行列のラーメン屋」と言えば「ああ、あの店ね」とほとんどの人が理解する。もはや行列は同店のアイデンティティとなっている。

ただ、行列に並ぶ理由はこの体験価値を得るだけではないと筆者は考えている。最近の都心の人出はすさまじい。特に休日、渋谷のような都心部に行くと街は人であふれ、休憩しようにもカフェはどこも混雑。「ちょっと一休み」すらままならない、いわゆる「都心のカフェ激混み問題」がある。

アフターコロナ以降、リベンジ消費に燃える人々に加えインバウンドを含め街中は多くの人であふれかえっている。都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家の谷頭和希氏の記事「東京に『座るにも金が要る街』が増えた本質理由」では、年々、街に無料で座れるベンチや滞在スペースが減ってきていることがカフェの混雑に拍車をかけていると指摘されており、街に「無料で滞在することが許される場所」がなくなってきているという。

行列に並ぶことは、カフェを探さないでいい免罪符になる

一方で、行列は「その場に長時間滞在せざるを得ない場所」である。並んでいる間は基本的にはその場にいることが義務であるが、一方で権利と取ることもできる。「カフェ、混みすぎて入れないね」と言い合って、空気が変になるのを防ぐ、いわば免罪符的な効能もあると考えられるのだ。

「カフェを探さなくて済む、免罪符だなんて!」と驚く読者もいるかもしれないが、もはや都心ではカフェ難民化は深刻な問題である。夫婦やカップル同士で行列に並ぶのなら、食事後にすぐ帰宅すればいいかもしれないが、友人同士はそうはいかない。

業態にもよるが、食事の時間が1時間程度だった場合、そのまま解散するのでは少し話し足りない。

しかし、そこが行列のできる店であれば、自動的に「その場にいる権利」を手に入れ、ゆっくりとおしゃべりをして、しかも最後には目的の店で「飲食や買い物」ができる。

2つの目的を同時に達成できるのは、実はコスパ、タイパに優れた行為であると言えるのではないだろうか。

大関 まなみ:フードスタジアム編集長/飲食トレンドを発信する人

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