「余命1年」を淡々と受け入れられたある趣味の力 「大地に還る」という感覚が心の中によみがえった
東洋経済オンライン / 2024年11月30日 8時30分
最初の医師は「がんだねえ」との診断だったが、次に診てくれた胸部外科の医師はCT画像と10分以上もにらめっこして「山田さん、がんじゃないかもしれません」と意外な反応を示した。
最初の人間ドックから5人目で初めてのことだった。その後、苦しい生検、PET検査などを立て続けに受けた。結果は「グレー」。結局、抗生物質を投与しながら経過観察をすることになった。
半年後、いよいよ最終判定をする日になって、大地震が勃発。こうなると診察どころではない。こちらも仕事の連続だ。連絡がつかないままあっという間に1カ月が過ぎ、「がん判定」はうやむやのままになってしまった。
その後、何の症状も現れなかったから、人間ドックの判定はやはり誤診だったのだろう。この一件以来、おのずと医療に対して距離を取るようになっていた。今回の宣告にあたっても、その距離感が心の衝撃のクッションになったのかもしれない。
大自然との一体感を味わえた
2つ目の理由はアウトドア趣味の影響だ。小学生のころから里山を駆け巡って遊んできた。途中、山の世界を離れたが、30代になって突然復活。高尾山、扇山、大菩薩、奥多摩、そして八ヶ岳と山歩きのフィールドがどんどん広がっていった。30代後半から40代にかけては月に3回は泊りがけで出かけていた。
何が山に導くのか。絶景、それもある。達成感、満足感、それもある。いろんな充実感を味わえるなかで、もっとも強く印象に残っているのは山=大自然との一体感を味わえたことだろう。標高の高さ低さ、有名無名など一切関係ない。
静かな山道をひとり登っていく。やがて緩やかな傾斜となり、周囲を見回すとブナの森となっている。大きな木の切り株に腰をかけて空を仰ぎ見る。そのときブナの新緑が、視界にある空一面を埋め尽くしている。鮮やかな緑の世界にくらくらとしてくる。このまま大地に還ってしまってもいい。そんな気分になってくる瞬間だ。大自然への畏敬の念にかられている。
おそらく、この「大地に還る」という感覚が、今回の余命宣告にあたっても心の中によみがえったのだと思う。
医療への距離感は、今回は診察、CT画像、入院生活などを通じて縮まっていき、進行がんを決定づける証拠が揃っていたことから、現実を受け入れざるを得なくなった。とはいえ、盲目的に医療を信じているわけではない。常に客観的に一歩引いたところから見ているつもりだ。そんな意識と「大地に還る」感覚があいまって、がんとの共存生活を決めたというわけである。
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