ライター必見「上手な文章」に欠かせない要素3つ 「12歳の子が読める文章」を目指すべき理由とは
東洋経済オンライン / 2024年11月30日 15時30分
事件ルポから教育問題まで、独自の視点で社会に切り込んできたノンフィクション作家・石井光太さん。石井さんの新著『本を書く技術』では、自身の取材・執筆の方法論を初めて明かしています。
取材時のノート術や文章表現のコツ、文章構成の基本などを同書から抜粋し3回にわたってお届けします。
質の高い文章表現とは何か
原稿執筆を生業としたい人にとって、「どうすれば上手な文章を書けるか」というのは永遠の課題だ。
スポーツの世界でもそうだが、活字の世界でプロとして食べていきたければ、それなりの勉強と訓練が必要となる。私は学生時代から今に至るまで、本を月に最低30冊は読んでいるし、毎日数千字の文章を書いてきたが、プロならごく当たり前のことだ。
文章の熟練度は、読書量、執筆量に比例する。私自身を振り返っても、デビューしたばかりの頃は、敬愛する作家の影響を受けて修辞技法にこだわって、描写が過剰になりがちだった。ただ、5年目くらいにはそれが薄まり、10年目くらいには新たな文体が生まれた。15年目くらいには、テーマによって複数の文体を書き分けられるようになった。
文章スキルを磨くのに遅いということはない。成長するには、「真剣に本を読んで書く」ということを日々淡々とやりつづけていくだけだ。
これを踏まえた上で、本稿ではノンフィクションにおいてプロとして優れた文章表現とは何かについて考えたい。要素を三つ挙げれば、次のようになる。
1 万人に伝わる表現であること。
2 文章にリアリティがあること。
3 テキスト以上の世界を読者に想像させること。
最初の「万人に伝わる表現」というのは、プロとしては当然のことだ。
WEB記事にせよ、雑誌にせよ、本にせよ、それらはあらゆる人が読むメディアであり、専門知識を持っている人だけが読めるとか、特定のファンだけが満足するといったものであってはならない。
だが、ノンフィクションは科学や経済といった複雑な問題を題材にしたり、歴史や海外の出来事を扱ったりするため、書き手がついそこで使用されている言語を多用しがちだ。こうした作品は、幅広い読者を獲得することができない。
ノンフィクションの中でも売れている作家は、どんなにニッチなテーマを取り上げていても、万人に開かれた表現で本を書いている。小中高の教科書や入試問題に用いられているものもあるし、漢字にふりがなをつけただけで児童書として再刊行されているものもある。
12歳の子が読める文章を目指し、作品を磨き上げる
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