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自衛隊「ミサイル大量購入」が予算消化に過ぎない訳 「防衛予算をどう使うか」の末に決められた購入計画

東洋経済オンライン / 2024年11月30日 8時0分

対して、国産ミサイルは旧式化してもそのままだ。ハープーンの後に登場した対艦ミサイルASM-1やASM-1C、SSM-1は、1980年代技術のままで放置されている。GPS誘導や対地攻撃機能を追加することはないし、JP-10燃料への変更による射程延伸や、それを活かした再アタック機能導入はない。

そのために、将来に差がつく。例示した対艦ミサイルの場合なら、最新のJSMや、その原型NSMを模倣した12式改良型が普及した後でも、ハープーンなら充分に実用に耐える。しかし、国産型はそうではない。どうにも使い道がないミサイルになるのだ。

第2の、保管や整備の問題である。ミサイルの大量購入を進めるとその負担が大きくなる。

まず、保管場所の制約がある。ミサイルを保管する弾庫には容量の制約がある。火薬類取締法で決められた換算爆薬量を超えて保管することはできない。つまり、このまま大量購入を続けると既存の弾庫には入り切らなくなる。

保管できる場所の確保も難しい

弾庫増設は簡単ではない。周辺住民や自治体がいい顔をしないこともあるが、それだけではない。そもそも適地もない。弾庫は住宅や学校、病院から決められた保安距離を確保しなければならない。ただ、基地周辺も住宅などの開発が進んでいるので、その保安距離がとれない。

しかも、今では保管可能量が減るという事態も起きている。神奈川県横須賀市にあった大矢部弾庫のトンネル式火薬庫は、換算爆薬量20トンまでの弾薬が保管可能だった。それが、50メートルの距離にマンションが建ったため、保安距離規定から保管可能量は100分の1、200キログラムにまで減少した。

また、ミサイルには整備の手間もかかる。最新型でも完全なメンテナンス・フリーではない。オーバーホールは不要だが、劣化する液体燃料と電池は定期交換しなければならない。

これまではミサイル保有数が少ないので問題とはならなかった。仮に交換間隔が2年のミサイルが自衛隊全体で480発あってもたいした問題ではない。弾薬は意図的に整備する月をならすので、毎月20発ずつの作業で済む。

それが増えるとなると、かなりの負担となる。15種類が毎年ざっと50発ずつ増え、それが10年続けば整備対象は7500発の純増になる。整備員を準備できるかもわからない。

しかも、ミサイルが旧式化した後も負担は消えない。使う見込みがあやしくなっても保管と整備は続くからだ。

例えば海自のスパローはその好例だ。戦闘機用だが、適当なミサイルがないので護衛艦「しらね」向けに購入したが、その直後に軍艦用に改良したシー・スパローが登場すると旧式化した。ただ、耐用年数が残るため購入から30年以上、2010年頃までミサイルとして保管整備を続けなければならなかった。

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