1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「トラック運転手の給与」上げるのに必要なこと 何がネックになっているかの洗い出しを

東洋経済オンライン / 2024年12月2日 12時0分

結果、依頼主が運賃を値上げしたとしても、物流事業者の運営コストに吸収されてしまい、十分なドライバーの給料にはつながっていないという声もある。

ITの活用でドライバーの労働時間を削減

こうした中、弊社も参加した秋田県トラック協会や、国土交通省が5月に行った「首都圏向け青果物の物流効率化 実証実験」は、持続可能な運送体系の構築が、運賃適正化につながった取り組みの一例である。

秋田県で生産される青果物の8割以上が首都圏で消費されおり、トラックによる600kmを超える長距離輸送が行われている。このため、ドライバーの長時間労働が問題となっていた。

実証実験では、ドライバーの役割分担やIT活用によって、トラックドライバーの労働時間を20%削減できた。これまで1台のトラックが行っていた秋田県内での集荷と、秋田県から首都圏への幹線輸送を分離して別のドライバーが担当することで、ドライバー1人あたりの労働時間を減らした。また、トラックの到着時間を事前に予約することで、待ち時間を短縮するITサービスも活用した。

検討段階では、トラックの位置情報をGPSで確認し、配送時間の内訳を詳細に把握。それにより、ドライバーが早朝から集荷を行い、荷物をまとめる台(パレット)に積み上げる業務外の作業も行っていたことが判明した。

配送先である首都圏の市場でも1〜2時間待機し、業務終了が深夜になることも少なくなかった。パレットに積まれた配送か否かなど、作業の種別ごとの実績を数値データで示すことで、依頼主や物流事業者など関係者全員で改善点を共有し、検討することができた。

一方で、改革を行っても、現状の輸送料金と、あるべき輸送料金の価格差異すべてを解消するには至らなかった。つまり、本来事前に交渉すべきであった燃料費、人件費の高騰分のすべてをカバーするのには不十分であることが判明した。

実証実験の結果を踏まえ、秋田県の物流事業者は運賃適正化に向けた交渉を続け、その実現に成功している。秋田県の事例からわかったことは、物流改善と運賃適正化の議論をセットで行うことが理想である。

運賃適正化に向けて、まずはドライバーの役割分担やIT活用を通じ、効率的かつ負担の多すぎることのない環境を整えることが必要である。秋田県の事例のように基本構造の再定義から始めることが求められる。

その上で、物流原価と収入を正しく把握し、1運行あたりの利益率を考えた交渉が必要だ。車両1台あたりに対して運賃を請求する方法だけではなく、季節によって変動するコストを依頼主側に負担してもらうために、車両台数を固定した契約に変更するなども選択肢の1つとして考えられる。

何にどんなコストがかかっているか「見える化」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください