三井住友建、麻布台ヒルズ住宅750億円損失の深層 「日本一の高さ」の称号を求めた代償は大きすぎた
東洋経済オンライン / 2024年12月4日 7時20分
もっとも波紋を広げたのは、2015年に横浜市の新築で起こした「傾きマンション」問題だ。基礎杭が支持層(マンションを支える固い地盤)に達していないことや施工データの改ざんが発覚。全棟の建て替えを強いられた。
この件をめぐっては、発注者の1社である三井不動産レジデンシャルから、三井住友建設と杭施工会社2社が建て替え費用等のおよそ500億円の訴訟を提起されている(現在も訴訟中)。
麻布台ヒルズのマンションで「背伸び」をした受注の代償は大きかった。
2021年から2022年にかけて、地下工事が想定とは違うことがわかり工法の大幅変更を余儀なくされ、15カ月の工期遅延が生じた。2023年には、地上の躯体工事において施工図の誤りによる部材の不具合が発覚し、一部の設置済み部材の取り替えが必要になった。
「泣きっ面に蜂」のごとく、今回は建設コストの上昇が襲った。IR担当者は次のように説明する。
労務単価が想定の倍以上に
「当初の竣工予定時期から大幅に遅れているため、修正後の工期に間に合わせることを最優先した。そのために作業員などの人材をかき集めたところ、労務単価が想定の倍以上になった」
「今回の損失のほとんどが内装工事にかかる部分。クロス、天井、ボードなどを設置する作業員を集めるためにコストが発生した。こういった作業は機械化が進んでおらず、どうしても職人の手作業に委ねなければならない。とくに、3月ごろに向けてマンションの供給がピークになる時期でもあり、高い賃金を支払わないと集めることができなかった」
この工事は2000人を超える作業員が集まる大所帯だ。三井住友建設の社員も大量に投入されている。大型工事だけに、人手不足を背景とする作業員の労務単価の高騰をまともに受けた形となった。
気になるのは、工事損失の計上は「これで本当に終わりなのか」ということだ。
業界関係者からは「今後、発注者に対する巨額の違約金が発生するのではないか」(ゼネコンの内情に詳しい市場関係者)、「建設費高が続く状況下、1年先のコストまで十分に織り込んでいるのか」(準大手ゼネコンの幹部)といった声があがる。
三井住友建設のIR担当者は、「今般の見直しによって、完成までのコストはおおむね確定している。違約金については全部織り込んでおり、協力会社とも契約できているので作業員は確保できている」と強調する。
工事は現在、修正後の工程どおりに進捗し、内装仕上げ工事や外構工事などの付帯工事を中心に施工中。すでに8割近く進捗しているという。
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