1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

セブン解体で岐路に立つ「コンビニATM」の王者 非連結化なら伊藤忠主導で業界再編に発展も?

東洋経済オンライン / 2024年12月4日 9時40分

見逃せないのは、セブンイレブンと三井住友カードとの提携が単なる集客にとどまらない点だ。ポイント還元を受けるにはセブンイレブンアプリでVポイントの設定を行う必要があるが、利用規約をよく読むと、セブンIDの会員情報を三井住友カードに提供する旨の記載がある。虎の子の購買データを商売敵に渡す姿は、「セブン銀行の非連結化を見越した動きにも映る」(同)。

「セブン色」が薄まる利点

セブン&アイHDの子会社でなくなった場合、セブン銀行はグループ外に活路を求めることになりそうだ。松橋社長も、連結子会社から外れることで「われわれの事業展開に自由度が出てくる。グループ外へのATM設置を拡大できる可能性はある」と話す。

セブン銀行のATMは、セブンイレブンやイトーヨーカドーといったHD各社の店舗にはほとんど設置済み。現在はHD外の商業施設や公共施設に力点を置いている。

ただ、「金融機関からATMの共同運営を受託している案件に関しても、『セブンイレブン色』が強いとして敬遠されている先もなくはない」(松橋社長)。セブン色が薄まれば、ATMの設置先の開拓が進みそうだ。

中でも注目は、セブンイレブン以外のコンビニチェーン店舗への設置だ。別の業界関係者は「伊藤忠商事の子会社であるファミリーマートの店舗に、セブン銀行のATMが設置されるのでは」と指摘する。

ファミマの名が挙がる理由は2つある。1つはセブンイレブンやローソンと異なり、ファミマは銀行子会社を持たず、独自のATM戦略を打ち出せていない点だ。ファミマの店舗には金融機関など63社の共同出資で設立された「イーネット」のATMのほか、2014年からは一部店舗でゆうちょ銀行のATMが設置され、店舗ごとに異なる機種が混在している。

折しも、セブン銀行は生体認証やQRコードの読み取りなどを搭載した新型ATMを展開中だ。機能性に優れるATMを得られるファミマと、現金輸送や保守運営の共同化などでスケールメリットを享受できるセブン銀行との相性は悪くない。

伊藤忠が促すコンビニATM連携

もう1つは、イトーヨーカ堂とヨークベニマルがセブン銀行株を処分する可能性があることだ。セブン&アイHDから切り離された暁には、2社がセブン銀行株を保有する義理はなくなる。

2社が保有するセブン銀行株の価値は、足元の株価で約300億円。セブン銀行の単体自己資本比率は約30%と銀行の中では最高峰だが、災害などでATMが破損するリスクを考慮すれば、自己株買いに踏み切る余力は乏しい。そこで、伊藤忠商事がセブン&アイHDの非公開化を支援した場合、セブン銀行株も一緒に引き取り、ファミマとの連携を促すシナリオが浮上する。

スーパーや専門店、外食、金融など、非中核事業に位置づけられたセブン&アイHDの子会社たちは、いずれ親会社の後ろ盾を失う。日本を代表する小売りグループの解体は、さまざまな業界再編の呼び水となりうる。

一井 純:東洋経済 記者

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください