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フランス「不信任」でどう転んでも近づく極右政権 国債利回り急騰、来年後半は選挙「臨戦モード」

東洋経済オンライン / 2024年12月4日 8時10分

極右は、社会保障関連法案の最終審議が始まる12月2日までに公的年金の物価スライド制導入などのさらなる譲歩を求めていた。

バルニエ首相は医療費負担の引き上げ方針を撤回する新たな譲歩案を提示したが、年金制度修正を受け入れなかったことから、極右は不信任案の提出に踏み切った。年金制度修正を受け入れなかったのは、財政再建の支障になるだけでなく、政権を支える中道勢力の猛反発が避けられないからだ。

極右政党の実質上のリーダーであるルペン氏は現在、欧州議会議員在職中の不正経費受給疑惑の係争中で、有罪となった場合、5年間の公職停止となり、2027年の大統領選挙への出馬ができなくなる。

2025年3月末に予定される判決を前に、早期の政権打倒に方針を切り替えた可能性がある。

バルニエ首相はかつて、EU側の首席交渉官として臨んだブレグジット(英国のEU離脱)協議で、英国が仕掛けるチキンレースに一歩も引かない強気の交渉姿勢を貫いた。

今回は極右の協力なしに難局を乗り切れないことから、比較的早い段階で譲歩姿勢を示していた。

だが、エスカレートする極右の要求に譲歩すれば、政府の財政再建の遂行能力が不安視される恐れがあり、全面的に受け入れることは難しかった。新たな譲歩案も結局、極右の不信任案提出を阻止することはできなかった。

財政拡張も、政治不安定化も、どちらも国債リスク

財政赤字の拡大を受け、ムーディーズとフィッチは10月にフランス国債の格付けを「Aa2」と「AA-」に据え置いたものの、いずれも見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。

また、5月に格付けを引き下げたばかりのS&Pは11月、フランス国債の格付けを「AA-」に据え置き、見通しも「安定的」で変更なしとしたが、政治的な不確実性に伴うリスクに言及している。

内閣総辞職で財政再建の行方が不安視されれば、国債格下げが視野に入ってくる。

内閣不信任案が可決されて総辞職となった場合、マクロン大統領は新たな首相を任命することになる。

もし左派勢力の切り崩しに成功すれば、極右と極左を排除する形での中道政権が誕生し、現政権よりも議会基盤が安定する。だが、今のところ穏健左派が政権支持に回る兆しはない。

左派の切り崩しに失敗する場合、中道右派の「共和党」とマクロン大統領を支持する中道会派「アンサンブル」が協力する現政権の枠組みが維持されるだろう。

6、7月の国民議会選挙後、バルニエ首相を任命するまでに要した時間と会派間の難しい調整を考えると、年内の暫定予算の成立を優先し、バルニエ首相を再任する可能性もある。

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