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ダイドー、「トルコで大躍進」の知られざる戦略 現地ブランド品が絶好調、背景には中東問題も

東洋経済オンライン / 2024年12月5日 8時40分

そんな中でシェアを伸ばしたのが、ダイドーのトルコ子会社が製造販売する現地ブランド「コーラ トゥルカ」。トルコ国民にとってはなじみ深い自国生まれのブランドで、受注が急増している。

需要増加に応えられる体制を整えた

特需だけが急成長の理由ではない。現地では生産効率化も進む。通貨のリラ安や原料コストの高騰を受け、ダイドーは近年、トルコ事業の原価率改善を目的に生産・物流面の効率化に力を入れてきた。

仕入先の見直しによるコスト抑制、増産の実施などで供給体制を整え、急拡大する需要に対応している。

商品単価の向上も利益に大きく貢献している。トルコで続くハイパーインフレを受け、ダイドーは年に複数回の値上げを実施。飲料の平均販売単価は1年で2倍近くまで上がっている。

にもかかわらず、ミネラルウォーター「サカ」や炭酸飲料「チャムリジャ」など、コーラ以外の商品も数量拡大が続いた。その結果、数量も今上期に前年同期比で2倍以上を売り上げ、値上げも相まって収益性が急改善している。

一方、国内の飲料事業は第3四半期時点で低迷している。

売上高は前年同期比4%減の1131億円、営業利益は同62%減の18億円と落ち込んだ。不調の主な要因は、昨年11月に実施した自動販売機の値上げだ。自販機商品の販売数量は前年同期比マイナス8%超と想定以上の客離れが続いている。

ダイドーの国内飲料事業は、販売数量の8割以上が自販機の売り上げ(2024年1月期実績)だ。客離れによるインパクトは大きかった。

数量の落ち込みを受け、今年8月には缶コーヒー2品の自販機推奨価格を20円値下げし、120円に設定した。こうした機動的な価格コントロールは、間に小売店を挟まない自販機だからこそ実行しやすい。ダイドーならではの取り組みといえる。

尖った商品開発も重視する。今夏はフリスクのタブレットをイメージした世界初の炭酸飲料「フリスクスパークリング」、今秋はコメ入りの缶スープ飲料「鯛茶漬け風スープ」を発売。他社にはないユニークな商品を通じて数量回復を狙う構えだ。

海外はニッチ市場の開拓に勝ち筋

国内の回復に尽力するダイドーだが、中長期的にみれば、人口減少で国内市場の縮小は必至。成長のためには海外で稼ぐ力が求められる。

中東における特需が終わった後も、海外事業の規模を安定的に拡大させられるかがカギとなる。ただし、欧州や北米、東南アジア、オセアニアへはすでに日系大手メーカーが進出しており、入り込む余地は小さい。

そこでダイドーは、現地に工場や販路を持つニッチ市場の開拓を急ぐ。今年2月にはポーランドの飲料会社を買収。同国は飲料市場が拡大しており、業績は好調だ。リラ安が続くトルコなどから、ズロチ高のポーランドへ一部原料を輸出し、コスト抑制も実現している。

ライバルが少なく市場が拡大している地域を開拓し、コスト面のシナジーを生み出せるか。自販機中心のユニークなビジネスモデルで成長してきたダイドーだけに、海外も独自の戦略に将来的な勝ち筋がありそうだ。

田口 遥:東洋経済 記者

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