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幸運を育む「セレンディピティ感度」の上げ方 「無自覚な先入観」が成功を遠ざけてしまう訳

東洋経済オンライン / 2024年12月12日 11時0分

タンザニアには、西洋の工業国から善意の人々が次々にやってきて、「何が必要ですか」「どうすれば助けてあげられますか」と尋ねてくる。

これによってユサフのコミュニティは、有無を言わさず「支援を受ける側」、悪く言えば受動的で無力な環境の被害者という枠組み(フレーム)でとらえられる。

これはコミュニティの人々の起業家精神に冷や水を浴びせ、施し文化を助長する。残念ながら欧米の非政府組織のなかには、いまだにこのやり方を続けているところもある。

このような「フレーミング」を劇的に変えたのが、南アフリカのソーシャル・ベンチャーである「リコンストラクテッド・リビングラボ(人生再建ラボ、Rラボ)」だ。

Rラボは、自分たちにはリソースがないという見方に疑問を抱き、それまで見過ごされていた、あるいは過小評価されていたリソースに目を向けた。たとえば元ドラッグ密売人が持つノウハウなどだ。

Rラボは、そうしたリソースを活用することで、運命を再定義した。運命は地域の人々に「降りかかる」ものではなく、自ら生み出すものとしたのだ。オンライン、オフラインでの数多くの会議や研修を通じて、この手法は広がっていった。

他者から押しつけられた「枠組み」を変える

Rラボのサポートを受けたユサフのチームは今、見過ごされている地域の強みや人材に注目し、その活用方法を考えるようになった。

これは単にビジネスに役立つアプローチというだけでなく、新しい生き方を提示する試みだと私は思った。

ユサフが問題だと感じたのは、外部のパートナーは地域の「ニーズ」ばかりを知りたがり、地域の強みを説明すると途端に援助資金を出そうとしなくなることだ。

だから援助を受ける側は、欠乏だらけのコミュニティだというイメージを伝えるようになり、自らも「それを信じるようになる」。

Rラボの薫陶を受けたユサフらは、それをやめた。新たな視点に立ったとき、世界はまるで違って見えたという。

リソースの制約は社会的につくられる側面もあると発想を切り換え、ユサフは自らの運命と運を主体的に生み出そうとするようになった。今では「しょっちゅう」セレンディピティを経験するという。

プロジェクトを一緒に運営してくれる新たなパートナーとの偶然の出会いなどがその例だ。

世界を見る枠組みを変える「リフレーミング」は、私たちの人生、さまざまな研修プログラム、事業支援、ベンチャーのインキュベーション、あるいは会社経営など、あらゆる分野に応用できる。

自分たちに足りないリソースにばかり目を向けるのをやめ、個人の能力を引き出し、尊厳を感じさせるように努めれば、これまでただ援助を求めるだけだった人や、予算ばかり気にしていた従業員が発奮し、自ら幸運をつくり出すようになるかもしれない。

クリスチャン・ブッシュ: サンドボックス・ネットワーク共同創設者

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