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シリア政権崩壊からみえる旧オスマン領国の不幸 民主主義、国民国家という枠組みが崩れ始めた

東洋経済オンライン / 2024年12月12日 8時0分

2024年12月8日、シリアのダマスカスのウマイヤド広場で、バッシャール・アル=アサドの父、ハーフェズ・アル=アサドの肖像画が捨てられていた(写真・Ali Haj Suleiman/Getty Images)

毎年12月になると「この1年に何が起こったか」という、重大ニュースをまとめるのが慣例だ。しかし2024年は、その12月になって矢継ぎ早に大きな事件が起こっている。

第1週に起こったのは、アメリカのジョー・バイデン大統領が息子ハンター・バイデンに恩赦を与えたことだ。その2日後には、韓国では尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が、まるで40年前に戻ったかのような戒厳令を発令した。

そして週末には、フランスの首相ミシェル・バルニエに対する弾劾決議で、バルニエは首相の座を降りた。その次の週は、53年続いたシリアのアサド体制があっけなく崩壊した。アサド大統領はロシアに亡命した。

世界の歯車が狂い始めた

世界の歯車が狂い始めている。民主主義の祖国が、非民主的な状態に陥っている。バイデンの恩赦で、民主党の権威は地に落ち、韓国はスキャンダルで追い込められて伝家の宝刀でもある戒厳令を発令して議会をねじ伏せようとし、少数支配のフランスの首相は予算案を憲法を使って強引に通過させたのである。

アメリカではそんな恩赦に対して反対の声すら起きず、韓国では戒厳令をなんとか阻止できたものの大統領の弾劾には至らず、フランスでも首相の退任まではこぎつけたものの、マクロン大統領の辞任にまで至っていない。

選挙による多数派の意志は、それ自体、絶対的正義を意味するものではない。しかし、民主主義という建前上、これに従うのは当然のことだとされてきた。しかし、今や政権与党はそれに耳を傾ける気はないらしい。

バイデン、マクロン、尹の各大統領は自ら「国民の分裂」を嘆くが、その原因が自分にあることに気づいていない。一般的には、こうした状態のことを「独裁状態」ともいうのだが、一度選ばれた以上、居座り続けるのが民主主義だということらしい。

またルーマニアやジョージアでは、選挙の結果をめぐって国内対立が激化している。後進諸国の選挙を無効だと叫ぶことで、民衆に“正しい”政権を打ち立てるというのが、アメリカが好む1つの「神話」だ。それならば、21世紀に脚色されたカラー革命などはそうした神話の1つであった。

カラー革命は、ユーゴ内戦の崩壊でアメリカの手に落ちたセルビアから始まったともいわれる。その後、アラブの春、オレンジ革命などの名称が使われ、民衆による独裁者からの革命を声高に叫び始めたのは、この20年のことだ。

民衆革命がもたらした混乱という現実

ウクライナ戦争は、まさにこうした「民衆革命」という神話から生まれたものだが、ポロシェンコからゼレンスキーという「民衆の大統領」がその後にウクライナにもたらしたものは、今起きているウクライナの混乱であったともいえる。

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