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組織を腐敗させない「ランダムなくじ引き」の力 偶然で権力を与えれば傲慢な行動を防げる

東洋経済オンライン / 2024年12月13日 11時0分

以下のようにすれば、うまくいくだろう。政治の分野では、クレロテリオンをコンピューター化したバージョンで参加者を選ぶ、大規模な市民議会を毎年開催する。

有給の陪審制度を強化したようなもの、と考えればいい。議員の任期は1年だ。議会はたとえば、公選議員の情報提供を受けたりしながら、その年に取り組むべき大問題を10ほど選ぶ。ある年には、気候変動や税制改革、次の年には健康問題や運輸といった問題が選ばれるかもしれない。

それに加えて、公選議員は市民議会に迅速な助言的意見を求めることもできる。立法機関で緊急に討議されている、イエスかノーかの問題に答えるような意見を求めるのだ。

パンデミックの間、混雑した公共空間でマスクの着用を法律で義務づけるのは、良い考えだろうか? シリアに爆撃を加えるべきか? ついにグリーンランドを買収する時が来たのか? という具合だ。

市民議会は、公選議員が得ているのと同じ専門家の意見や助言を得ることを許される。市民議会の議員は、問題について議論してから、公開の助言的意見を出す。公選議員はその助言に従う義務はないが、ランダムに選ばれた人々の知恵が誰の目にも映る。

もし政治家がそれとは違う見方をしていたなら、彼らは少なくとも、市民議会が提案した解決策を採用しない理由を説明しなければならない。

これと同じようなモデルは、多国籍企業から警察署まで、どんな大規模組織にも採用できるだろう。

大企業は自社の一般職員からくじ引き制で人を選んで、影の取締役会を組織することができる。大きな決定を下す必要が出てくるたびに、その影の取締役会が自らの見解を示す。

そうすれば少なくとも、一般職員からは掛け離れて、実状を知らない取締役たちも、下からの見方に取り組まざるをえなくなる。

四半期利益を追求する果てしない競争にはまり込んで視野が狭くなっている取締役会とは無関係の影の取締役会は、無視されてばかりいる大局的な問題に上層部の目を向けさせ、壊滅的な失敗を避けるのを助けることができる。

警察署のような公的機関の場合には、違法行為を調べる民間人の審査委員会は、機関の運営に影響を及ぼす主要な決定に介入する、市民から成る影の委員会によって補足することができるはずだ。

影の取締役会や委員会は、間違っていることもあるだろう。だが、権力を握っている人々が、彼らの決定に左右される人々からランダムに選んだ集団の見解を、ときおり注意深く検討せざるをえないというのは、健全なことだ。

「くじ引き制による監督」の長所

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