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"斜面の魔術師"作った「集合住宅」の衰えない人気【再配信】 里山に溶け込む住宅、緑が豊かな部屋の内部

東洋経済オンライン / 2024年12月16日 8時0分

敦史さんは「父はよく『戸建てを超える集合住宅を作りたい』と言っていました。広くていい環境に安く住んでもらいたい、という考えのもと、斜面地の住宅を設計していたと聞いています」と語る。

共治さんが斜面の開発に力を入れたのは1980年代半ばごろ。マンションが大量に建てられ、団塊の世代が購入し始めたころだ。

都心の好立地や駅近の敷地は大手デベロッパーが開発し、共治さんのもとに仕事はまわってこない。

ならば自ら開拓しようと、親しい不動産屋を訪ねて土地を探し始めた。そこで目をつけたのが「斜面」だった。

「なぜ斜面かといえば、平坦な土地よりも価格が非常に安いから。建物は南向きがいいとされているため、北向きの斜面はさらに安価です。方位や場所、景色のよさなどから、“料理をするとおいしくなる斜面”を探したそうです」

北向きの斜面も仕掛けによってはいい場所になる。やりようによってはいい物件が建てられる場所を求め、都市開発における将来的な交通網の発展まで視野に入れて調査した。

「土地を見極め、さらに絵も作っていました。設計して模型を作り、構造計算も行う。収支計算までして、利益が出る計画だと判断できたら、デベロッパーのもとへ『やりませんか』、と持って行ったようです」

ヒルサイド久末もまさにこの方法だ。

川崎市高津区久末にある土地は、駅から離れ、スーパーも近くになく、とても不便な場所だった。高低差が約25mという急斜面で、粗大ゴミが捨てられていたような場所を、多くのデベロッパーは売れない土地と判断していたのだ。

「父はうまく環境を作れると思ったんでしょうね。蓋を開けてみれば倍率は約7倍、1日で完売したそうです。見に来た人は気に入ってすぐに決め、抽選になったと聞いています」

斜面住宅にはさまざまな種類がある

斜面住宅と一言で言っても、その形はさまざま。

斜面に沿うように建てた住宅もあれば、斜面をカットして擁壁(ようへき:土砂などが崩れ落ちるのを防ぐための壁)を作り、その上に建てる手法もある。土地には特徴があり、特に斜面は個性が強いため、設計の仕方はそれぞれ変わる。

ヒルサイド久末とゆりが丘ヴィレッジに続いて、1987年に「ペガサスマンション大倉山」(横浜市港北区)が竣工。

さらに、1991年には東京・八王子に7戸×6棟のひな壇上の「テラス42(現:ヒルサイドテラス平山城址)が完成した。ほかの斜面住宅とは異なる形状だが、横浜市保土ケ谷の「HOMES20」も斜面地に建てられている。

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