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中国の地方政府が「地元の空」を売り出した思惑 山東省の県政府系の国有企業が193億円で落札

東洋経済オンライン / 2024年12月17日 18時0分

中国は「空飛ぶクルマ」の開発や商用運航に向けた基盤整備で最先端を走る。写真は億航智能が開発した空飛ぶクルマ(同社ウェブサイトより)

中国では近年、「空飛ぶクルマ」などが飛行する低高度空域を活用して経済振興を図る「低空経済」が脚光を浴びている。そんな中、山東省の地方政府が地元の低高度空域の利用権を競売にかけたことが明らかになった。

【写真】浙江省温州市に建設された空飛ぶクルマの発着場

山東省済南市の公共資源交易センター(訳注:公有資産の競売サービスなどを提供する公共機関)が11月26日に開示した情報によれば、山東省平陰県の政府が「低空経済の30年間の独占経営権」の入札を募り、それを金宇通用航空という企業が9億2400万元(約193億円)で落札した。

真意めぐり臆測飛び交う

財新記者の取材に応じた複数の業界関係者によれば、これは低高度空域の独占的な利用権が売り出された中国初のケースだという。平陰県政府の動きは(空飛ぶクルマ業界や地方政府関係者に)大きな波紋を呼び、一部からは「天を売る行為だ」との批判も浴びている。

独占経営権を落札した金宇通用航空は、平陰県財政局の全額出資で11月5日に設立されたばかりの国有企業だ。公共資源交易センターの開示資料によれば、金宇通用航空は独占経営期間を通じて平陰県の低空経済の運営・維持に携わり、空飛ぶクルマの操縦免許の教習サービスや、市街地での物流・配送サービスなどを提供するという。

とはいえ、開示資料の内容は具体性を欠いており、平陰県政府がなぜ空域利用権を競売にかけたのか、その真意をめぐりさまざまな臆測が飛び交っている。

平陰県政府の動きに対する(外部の専門家の)解釈は、主に3つある。その1つ目は、落札金額がいわゆる「空域利用料」に相当するという解釈だ。これに従えば、1年当たりの空域利用料は3080万元(約6億4500万円)という計算になるが、ある専門家は「高すぎる」との見方を示した。

2つ目の解釈は、平陰県政府が譲渡したのは「インフラ施設の独占経営権」であるというものだ。ある専門家は、競売にかけられたのは実際には県内の2カ所の(空飛ぶクルマ用の)飛行場を経営する権利であり、開示資料に書かれた「低空経済の独占経営権」という表現は誤解を招くと指摘した。

新手の資金調達手段との見方も

3つ目の解釈は、上述の2つとは視点が大きく異なる。ある政府関係者の説明によれば、地方政府が(何らかの)公有資産の独占経営権を売り出す場合に最重視するのは、必ずしも具体的な事業内容ではないという。

むしろ肝心なのは、(独占経営権を落札した)地元の国有企業が銀行融資や債券発行などの資金調達機会を得られるかどうかだ。すなわち、平陰県政府の狙いはこれまでにない資金調達手段の開拓にあったという見方である。

3つの解釈のどれが正解に近いかはさておき、低高度空域の利用者に対して費用負担を求めることは、中国各地の地方政府が検討を進めている。その仕組みをどのように整備するかが、低空経済の今後の発展を左右する1つのカギになりそうだ。

(財新記者:方祖望)
※原文の配信は11月28日

財新 Biz&Tech

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