『会社四季報』が機関投資家と戦う武器になる理由 全上場3928社のデータを網羅する情報集積力
東洋経済オンライン / 2024年12月18日 8時5分
『会社四季報』は、日本国内全上場3900社超の業績、財務、株価、独自予想などを網羅した企業情報誌で、株式投資のバイブルとして多くの投資家に愛されている。いまや2000ページを超える四季報を、15年間全ページ読み続けたのが、数々の経済予測を的中させる最強のエコノミスト、エミン・ユルマズ氏である。
本記事では、エミン氏の四季報活用術が全公開された『エミン流「会社四季報」最強の読み方』を一部抜粋・再構成のうえ、『会社四季報』を読むことが機関投資家と戦う武器になる理由について解説する。
プロは案外会社四季報を読んでいない
野村證券で機関投資家営業2部に所属していたとき、私は文字通り、機関投資家を相手に商売をしていた。機関投資家とは、人から預かった資金を運用して増やすことを仕事としている人たちのことだが、そういう人たちに対して、さまざまな投資情報を提供することによって、野村證券に株式の注文を発注してもらえるようにするのが、私たちの仕事だ。
当然、さまざまな機関投資家と日々、コミュニケーションを取るようになるのだが、その時、気付いたのは、案外、機関投資家で会社四季報を熟読している人は少ないということだ。
これはある意味、個人投資家にとっては強みと言っても良いかもしれない。機関投資家のファンドマネジャーは、自分が担当しているセクターについては、セールスよりも詳しいのが当然だ。何しろお客さんから預かっている大事な資産を運用しているわけだし、一方でセールスが言うことといえば、自分が属している証券会社のアナリストから聞いた情報を、そのまま伝えているだけだったりする。
しかし、機関投資家からすれば、そのようなセールスからもたらされる情報には何の付加価値もない。なぜなら、自分から直接、証券会社のアナリストに話を聞くことができるし、そのアナリストが書いたレポートを読めば十分だからだ。
その代わり、といっては何だが、機関投資家はなぜか会社四季報を読まない。読まなくても、証券会社のアナリストが情報をもたらしてくれるからだが、だからこそ私たちが会社四季報に記載されている情報を元にレポートを作成して配布すると、重宝がってくれた。アナリストがカバーしていない中小型企業の情報は特に、である。
個人投資家の勝算
もちろん私がかつて働いていた野村證券にも、中小型企業を専門に分析するアナリストはいた。とはいえ、中小型企業なんて山のようにある。だから、一社ずつ会社の中身を詳細にチェックして分析するところまでは手が回らず、一定のスクリーニング基準で機械的に注目銘柄を抽出しているケースが大半だ。
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