知られざる「日大」裏面史、続発する不祥事の深刻 「魔窟」に群がった政界黒幕から暴力団組長まで
東洋経済オンライン / 2024年12月18日 9時0分
田中英壽理事長体制での一連の事件を経て、2022年7月、作家・林真理子氏を理事長に迎えた日本大学。改革が進むかにみえた新体制だったが、アメフト部薬物事件、重量挙部・陸上部・スケート部における「被害額約1億1500万円超」もの金銭不祥事などが立て続けに起こっている。このほど上梓された『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』では、いま話題の『地面師』著者でもある大宅賞作家の森功氏が、累計120万人以上の卒業生を送り出した戦後の「日大」裏面史を掘り下げながら、その原因を探っている。日本最大のマンモス私大でいま何が起こっているのだろうか。本書を、ノンフィクションライターの西岡研介氏が読み解く。
文字どおりの「日大裏面史」
児玉誉士夫に小佐野賢治、許永中に司忍……。戦後最大の政界フィクサーから暴力団組長まで、巻頭に付けられた〈本書に登場する主な関係者〉一覧に記された名前の数々が、この巨大組織の「魔窟」ぶりを象徴している。
16学部86学科を擁し、7万人余の学生を抱え、120万人超の卒業生を社会に送り出してきた国内最大の私立大学、日本大学のことである。
2021年に東京地検特捜部が摘発した、医学部附属板橋病院の建て替え計画をめぐる背任事件と、それに伴う脱税事件で、5期13年にわたり、同大学の実質的なトップとして君臨してきた「日大の首領」こと、田中英壽・元理事長(本年1月に死去)が失脚し、大学から追放されたことは記憶に新しい。
本書は、田中退陣後に発覚した、アメフト部員による薬物事件で浮き彫りとなった組織の“隠蔽体質”をはじめ、このマンモス大学を長きにわたってむしばんできた“病理”を明らかにした、文字どおりの「日大裏面史」である。
その病理を体現していた1人は間違いなく、理事長に就任した2008年から失脚する2021年まで、年間約2500億円もの予算を差配し、約1300人の大学職員を支配してきた前述の田中だ。が、実は、日大にはかつて、このワンマン理事長の「原点」とも、「雛形」ともいえる人物が存在した。
「日大中興の祖」として知られる古田重二良(じゅうじろう)である。
日本大学をはじめ、法政大学や明治大学など、日本の主要私大の多くは戦前の「法律専門学校」を前身としている。戦後、日大の理事長に就任した古田は、旧専門学校からの脱却を図るとともに、「世界的総合大学」を目指し、理系の学部・学科を中心に増設。わずか10年で、日大の収入を100倍にしたという。
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