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「中学受験」で子どもの"言語能力"が身につく理由 タブレット端末の学習では得られないこととは

東洋経済オンライン / 2024年12月18日 16時0分

しかし、「合宿のときに食べたカレーがいつも以上に美味しかった」「10歳のときの誕生日会がとても楽しかった」など、心が大きく動いた時のことはきっと覚えているはずです。

この例からもわかるように、人間は心や体が動かないと、経験として身につきにくいものなのです。

指先で画面をタップする動きだけでは、心と体は大きな動きを見せないので、子どもたちの成長につなげる取り組みとしてはデジタルツールの活用は適していないといえるでしょう。

とはいえ、パソコンやタブレットの活用は時代の流れともいえます。

その中で、デジタルツールをできるだけ効果的に活用するには、まず保護者から子どもたちに対して目標とモチベーションを与え、しっかりコミュニケーションをとりながら進めることが必要です。

そうすれば、デジタルツールを活用した学習も、少しは意味があるものにできる可能性はあるでしょう。

ただし、小学生にとってパソコンやタブレットを使った学習は、あくまで中身が勉強であるだけでゲームに過ぎない、という認識を持っておくことが大事なポイントです。

教育のデジタル化だけでなく、子どもたちが生きていく未来は、これまで以上に変化の激しい時代になり、ますます前例を踏襲すれば良いとは限らない時代になります。

常に未知の出来事や技術、課題と向き合い続けなければならず、それらを乗り越えるための力を身につけていかなければなりません。

よく「思考力」が最も重要といわれますが、「思考する」という行為は常に言語を用いて行われるので、「言語能力」がすべての能力の土台であるといっても過言ではありません。

子どもたちの能力開発という視点で考えると、中学受験の最も大きなプラス面は「言語能力」を鍛える機会になることです。なぜなら、数多くの文章に触れることができ、数多くの言葉や知識を、言語のやりとりを通じて学べるからです。

中学受験で身につく「言語能力」

中学受験では長い条件設定を正しく読み取り、その中から必要な情報を引き出す練習や、漫然と感覚的にわかっていることを言語化して抽象化する練習も行います。

まだまだ感覚的で、具体的なものでなければ理解しきれない子どもたちにとって、抽象的な事象を理解したり、言葉を使って抽象化したりすることは、思考するために必要な「言語能力」を鍛える訓練となります。

もちろん、小学校の学習でも行っていますが、進学塾では小学生には難しいとされるレベルの題材を使って訓練することで、より大きな成長につながるのです。

英語やプログラミングを習わせることも、それらに対する動機付けという面では大切ですが、小学生のうちに習ったことが、将来の武器になる可能性は非常に低いとも言えます。

それならば、小学生の間は親子できちんと会話したり、本を読ませたり読み聞かせをしたりといった、言葉を使った生活環境を大事にする方が、将来の武器になる可能性が高いといえるのではないでしょうか。

大人が子どもたちに「言葉があふれている」環境を与えることの価値が近年大きくなっていますし、今後もさらに大きくなっていくのではないでしょうか。

黒田 耕平:希学園理事長兼学園長

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