「年金50万円の壁」見直しで高齢社員の立場が激変 役職定年制やシニア社員制度は廃止の方向へ?
東洋経済オンライン / 2024年12月19日 10時30分
つまり、「高齢社員の皆さん、お疲れさまでした。これからは、管理職や第一線の職務から退いて、補助的な業務を少しだけやって、のんびり余生を過ごしてください。その代わり給与を大幅に下げさせてもらいます……」というわけです。
しかし、このやり方を今後も維持するのは困難でしょう。まず今後、社内ご隠居が激増します。たとえば、60歳で役職定年になり65歳の定年までの5年間が社内老後だという場合、70歳定年になったら10年間に伸びます。単純計算で社内ご隠居が倍増します。
しかも、AIやロボットの進化・普及で、衰えた高齢者でも対応できる補助的な業務は今後どんどん減ります。大量の高齢社員が補助的な仕事すら与えられず、何もしないで長い長い社内老後を過ごすわけです。
かつて高齢社員が少なかった頃は、10人の職場に1人くらい社内ご隠居がいても、「まあ仕方ないかな」「彼も職場の潤滑油」と大目に見ることができました。しかし、それが3人4人と増えてくると、さすがに見過ごせなくなります。
制度撤廃で年齢に関係ない働き方が実現
この状況で在職老齢年金制度が撤廃されたら、どういうことが起こるでしょうか。働き控えをしていた最大50万人の高齢社員がより多く働くようになり、職場はいよいよ高齢社員だらけになります。
ここで合理的な経営者なら、そもそも社内ご隠居を生む元凶である役職定年制やシニア社員制度の廃止に踏み切るでしょう。そして、年齢に関係ない働き方や賃金制度を導入するはずです(先進的な企業はすでにこの方向で改革を始めています)。
「高齢者だらけになって会社は大丈夫?」と思うかもしれませんが、高齢者の能力・意欲に応じて職務を与え、職務の難易度・大きさによって賃金を払うジョブ型の仕組みにすれば、大きな問題はないでしょう。
若手社員の多くが「健康で、やる気満々だが、貧乏」であるのに対し、高齢社員は健康状態・意欲・経済状態などまちまちです。その極めて多様な高齢者を「60歳になったら補助的な業務をしてください」「65歳になったら辞めてください」と一律に処遇する日本の雇用制度は、まったく合理的ではありません。
今回の在職老齢年金制度の見直しによって、高齢者の働き方をめぐる議論が活発になり、超高齢社会に合った合理的かつ多様な働き方が実現することを期待しましょう。
日沖 健:経営コンサルタント
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