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「遺伝子組換えでない」の表示がめっきり減った訳 「遺伝子組み換え食品」は本当に危険なのか

東洋経済オンライン / 2024年12月20日 16時0分

微生物の遺伝子を植物に組み込むなどと聞くと、ギョッとする人もいるかもしれません。これが可能なのは、遺伝子を構成しているDNAが、どの生物でも共通だからです。遺伝子の違いは、DNAに含まれる塩基の配列により生じます。

ただし、ヒトとほかの生物が共通に持っている遺伝子も多数あります。生物の進化の歴史の中でも、ある生物の遺伝子が別種の遺伝子に入る、というような自然の遺伝子組換えが多数起きてきたようです。

こうした研究も踏まえ、遺伝子を別の種の生物に導入する遺伝子組換えが行われています。どんな遺伝子がどこに入って何を作るか、ケースによってまったく異なります。場合によっては毒性物質やアレルゲンが生産される可能性もあるので、日本では、内閣府食品安全委員会や農林水産省、消費者庁などが審査し、組換えされていない品種と同等に安全と評価したものだけを認める仕組みとなっています。

遺伝子組換え食品を、そのまま販売したり加工食品の原材料として製造販売する際に日本では、原則として「遺伝子組換え」と表示して販売することが義務付けられています。対象は大豆やとうもろこし、なたね、パパイヤなど9農産物と、それを原材料とした33加工食品群(豆腐や納豆、豆乳、コーンスナック菓子など)です。

昔は、「遺伝子組換えでない」という表示が豆腐や納豆などでよく見られました。しかし、現在は表示の規制が厳しくなり、遺伝子組換え品種と分別して運び加工するなどしたうえで、検査などにより「遺伝子組換えの混入がない」と確認されたものでないと「遺伝子組換えではない」という表示はできません。

輸入運搬や工場で「うっかり組換え大豆が1粒入ってしまった」というようなことも許されなくなり、「遺伝子組換えでない」という表示の製品はめっきり減りました。

油、液糖、醤油には表示義務はない

一方、油や液糖、醤油などは、原材料として遺伝子組換え品種を用いていても表示義務はありません。油や液糖には、組換えされた遺伝子や、その遺伝子からできたたんぱく質などが含まれておらず、検査で遺伝子組換え原材料を用いたかどうか判断できません。醤油は、発酵工程で遺伝子やたんぱく質の分解が進んでおり、これも検査では判別できません。こうしたことから、表示義務は課されていないのです。

日本の食品メーカーは、「遺伝子組換えは消費者に好まれていない」と理解しています。そのため、用いた場合に「遺伝子組換え」と表示しなければならない豆腐や納豆などの食品については気をつけ、原材料として遺伝子組換え品種を用いないようにしています。一方、油や液糖、醤油など表示が必要でない食品製造には用いています。

また、とうもろこしや大豆、なたねなどの絞り滓は、飼料として動物に大量に与えられていますが、その動物の肉なども遺伝子組換え品種で育てられていることを表示する必要がありません。そのため、日本人は知らない間に2000万トンを超える遺伝子組換え作物を輸入し、直接的に、あるいは肉や卵などとして間接的に食べている、ということになります。

遺伝子組換え食品が人々に食べられるようになってもうすぐ30年になり世界で利用されていますが、健康影響をもたらす事故は1件も起きていません。厳しい審査が効果を発揮しているのでしょう。神経質になる必要はないだろうと考えます。

松永 和紀:科学ジャーナリスト

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