男子ゴルフに新展開!「前澤杯」の大胆アイデア 賞金総額4億、プロアマ参加権100万円など話題
東洋経済オンライン / 2024年12月21日 7時0分
日本ゴルフツアー機構(JGTO)が12月18日、都内で2025年のツアースケジュールを発表。画期的なトーナメントを男子ツアーに取り入れることがわかった。
男子ツアーは試合数、賞金額とも女子ツアーに抜かれて久しい。来年開催予定は24試合で、賞金総額がまだ確定していない試合も多いが、昨年の実績から考えると今のところは33億1458万円で5330万円増となる。ちなみに、すでに発表された女子ツアーは37試合、総額44億3500万円で、男子ツアーを大きく上回っている。
異例ずくめの『前澤杯』
賞金総額で辛くも昨年実績を上回った男子ツアーだが、これに貢献したのが、日本ツアーで初めて、というか、世界のツアーでも聞いたことがない取り組みを行う大会を組み込んだからだ。
それは「賞金総額最大4億円、優勝賞金8000万円」という、4月に行われる「前澤杯 MAEZAWA CUP2025」という大会だ。
ファッション通販サイトを運営するZOZO元社長の前澤友作氏(カブ&ピース社長)がオーナーを務めるゴルフ場を運営する「むつざわゴルフパーク」が主催することになっているが、実質は前澤氏の発案・企画で行われる。
同じ名称を日本語と英語で繰り返す正式大会名も、たぶんツアー競技では初めてだろうが、前例がない取り組みとはその点に注目して言っているのではない。
この大会では最大10日間のプロアマ戦を実施し、1日最大50組、1組当たり100万円で「プロアマ参加権」を売り出すという。その売上金を賞金に還元する。
大会期間は、通常開催される週の月曜日から日曜日の7日間が「トーナメントウイーク」と呼ばれる。だが、この大会は4月14日から27日の14日間が当てられているのが異例で、いわゆるツアーとしての本戦は4月24~27日の4日間。
会場となる千葉県のMZ GOLF CLUB(旧デイスターGC)は、前澤氏が所有するプライベートクラブなので、日程がどれだけあっても対応できる。
発案は前澤氏だという。同氏側と選手側の間に立って調整したJGTOの倉本昌弘副会長は「前澤さんの発想がすごい」と言い、「“プロアマ”は売れるんだよね」という問いかけから始まったという。
ツアーで通常行われるトーナメント本戦前日のプロアマ戦については、これまでもこのコラムで紹介してきたが、多くは大会を主催するスポンサーが自社のクライアントらを招く接待の場として使われている。
プロはスポンサーの意向をくんで、一緒に回るアマにレッスンや会話などで喜ばせるのが、スポンサーへのホスピタリティーになってきた。つまり、プロアマ参加権はスポンサー企業が一括して買い取ってきた、ということだ。プロアマ参加権の買い取り費用がトーナメント開催費用ということになり、多くは企業の広告宣伝費の形になっていた。
これに対して、前澤氏は「買い取った」プロアマ参加権を自社で売りに出すという発想。過去にプロアマ戦の枠を有料で売ったトーナメントはあったが、プロアマ戦が1日しかなかったこともあって限定的だった。今回は10日間もプロアマ戦を行って、その参加権の売り上げで本戦の賞金総額を賄う。これは今までになかったスタイルとなる。
プロアマ参加権が完売したとして、売り上げは単純計算で1日5000万円×10日間で5億円。ここから経費などを引いて最大が4億円という計算だろうか。最大額としているのは、プロアマ参加権の販売状況次第では大会前までに変動する可能性があるからだ。
プロアマ戦なので1組に1人、プロゴルファーが一緒に回る。1組の人数はプロ1人にアマ最大3人だが、カップルでもいいし、1人でプロとのラウンドを独占しても構わないという。大会参加プロは99人の予定で、その中から1日50人のプロが参加することになる。
一緒に回るプロを「オークション」で指名
ただ、100万円を出すのだから「希望のプロと回りたい」のが本音だろう。そのような人の場合、一緒に回るプロを「オークション入札方式」で指名できる。「○○プロと回りたい」という人が多い組は、100万円から金額が競り上がっていくことになる。
通常、99人のプロが均等に参加すれば10日間で1人5回程度になるが、オークション方式を採用すれば人気プロは「10日間出ずっぱり」もありうる。そうなれば、本業の本戦4日間を含め14日間ぶっ通しでゴルフをすることになる。
逆に組(プロ)が「売れ残る」可能性もあり、当然だが売れなければ売り上げが減り、賞金総額が減る。売れない場合はプロアマ戦期間の短縮も考えられる。賞金総額が流動的なのはそのためでもある。
倉本副会長は「(この方式は)怖い部分もあります。男子プロの世間での評価がわかってくる」としたが、「ただ、私は今の男子プロはもっと評価されていいと思っていますので、この方式を男子でやる価値はあると思います」と、好評価への期待も込める。
選手たちの反応は
プロ側の意見はどうだったのだろうか。選手に説明会を行って意見を求めた際には、前澤氏のアイデアに選手たちも賛同したという。オークションが人気投票のようになる可能性や、仮に14日間ゴルフをすれば体調面が心配される、といった懸念材料についても、理解、了承したうえで参加するという。
「選手はノーを言える立場にいるので、イヤなら出なければいいということです」と倉本副会長。オークション必至で14日間ゴルフをする可能性がある石川遼も「オレ、やるぞ」と乗り気だったという。
プロアマ戦に参加したプロには「ギャラを出す予定」といい、参加する回数が多いほど副収入にはなる。体調面も考慮して、ラウンドでは通常は使わないカートを使用。長く拘束されがちのプロアマ戦表彰式もなくし、プロの負担を減らすという。
発案・企画した前澤氏は、会見に以下のコメントを寄せた。
「何度かプロアマに参加させていただいていますが、プロの弾道・アイアンの音・グリーン周りの小技、間近で見せてもらえるすべてに毎度感動しております。こうしたプロアマの感動を皆さまにもお届けしたい。お仲間やカップルや家族で気軽に参加していただきたい。
そんな想いから、日本初となる最大10日間のプロアマ戦の開催と参加チケットの一般販売を本大会の目玉としました。プロアマの興行収入を賞金に還元したり、予選カットを廃止して全選手に賞金が出るようにしたり、『経済がしっかり回る大会』を目指し、持続的に男子ツアーを盛り上げていく一役を担えればと思います」(一部抜粋)
これまでの「ツアー競技」というのは、トーナメントウイークの月曜日からプロの練習日があって、大会前日のスポンサーのプロアマ戦や前夜祭があって、4日間の大会があって、日曜日に優勝者が決まって……、というのが定型として続いてきた。
プロアマ戦を10日間やりたいのであれば、ツアー競技の中に組み込まなくてもできる。それをあえてツアーの中に組み込んだのは、何よりJGTOの人気浮揚策になりえるかもしれないからだ。
先述の通り、男子ツアーの試合数はバブル期の3分の2ほどに縮小。日本ゴルフトーナメント振興協会(GTPA)のデータによると、2024年の1試合当たりの平均入場者は男子が1万1820人、女子は1万1243人。男子はすべて4日間大会で、女子は37試合中半数強の19試合が3日間大会なのでギャラリー人気は女子に軍配が上がるが、それほど差があるわけではない。
しかし、メディア、SNSなどでの露出度は女子のほうが高い。注目度の点から、男子は印象が薄いというイメージになっており、「試合の賞金は女子より高いのに注目されない」と思われてしまうと、スポンサーもつきにくい。これをどう払拭するかが、このところの男子ツアーの課題でもあった。
今回の初の試みについて、倉本副会長は「やってみないとわからない。やってみてダメだったらやめればいい。とにかく、今は突破口がない」と男子ツアーの現状への危機感がある。
他の主催者からも「(人気を上げるには)どうしたらいいですか」と聞かれるといい「ゴルフの常識ではないところでやってみるのもいいかもしれない」と、ゴルフ界とは無縁のところで成功した人のアイデアに期待もある。
「ラウンドガール」の帯同も話題に
プロアマ参加権とは別に、プロアマ戦、本戦とも「ラウンドガール」が全組について、スコアボードを持って華を添える。この試みもツアーでは初めて。
前澤氏はカーレースチームを持ち、自身もレースに参加している。カーレース場を彩るレースクイーンのイメージからのアイデアだろうか。「4月なのでさすがに水着という訳ではないと思う」と笑った倉本副会長は「選手に気にならないか聞いたら、気にならないっていうんで」とまた笑った。さて、どうなるだろうか。
オークションの方法なども含めてプロアマ参加権についての詳細情報の告知や、本戦の入場券の販売開始は、来年2月中旬に予定されている。
いずれにしろ、これまではトーナメントの主催者のクライアントなどでなければツアーのプロアマ戦に出られることはなかったのが、100万円かかるとはいえ広く一般ゴルファーにも開かれることになる。今後、他のトーナメントにも影響があるのか、男子ゴルフの活性化につながるのかなど、注視すべき試みになりそうだ。
赤坂 厚:スポーツライター
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