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「多様性尊重」で逆に炎上、残念ケース増える背景 「つくり出された炎上」多発、企業の対応も変化

東洋経済オンライン / 2024年12月25日 8時0分

倉沢:ジェンダーを含む「多様性」について、それをどう尊重すべきかをめぐって起きた炎上もいくつかありましたね。

西山:そうですね、ダヴによるルッキズム批判の広告に対しては、「逆にルッキズムをあおっている」といった批判が起きましたし、ワコールがジェンダー多様性に配慮した接客方針の中で「性別にかかわらず利用できる試着室」を打ち出したのには、性被害の懸念などが指摘されました。

企業活動をするうえで多様性は必ず尊重しなければならないのですが、そこで既存の利用者・消費者、とくに女性の利用が制限されるとか、リスクが高まってしまうとか、そういう部分にも配慮する必要があります。単に多様性を尊重するだけでは、現実の利用者の反発を食らいやすくなっているといえるでしょう。

倉沢:西山さんは最近の記事で「つくり出された炎上」が多発していると指摘していますが、これはどういうことでしょうか。

西山:これまで炎上というのは、何千件、あるいは何万件という批判がSNS上で自然に巻き起こってくるものでした。でも近年は、賛否両論がちょっとだけ起きている案件についても、いわゆる「こたつ記事」で「批判殺到」「炎上」みたいに書かれ、それをきっかけに議論が沸騰していくケースが増えてきました。

例えば、丸亀製麺の事例です。上戸彩さんがうどんをすする音について「ヌードルハラスメントだ」という意見が出てきました。また、花王ハミングの動画広告で描かれている夫婦については、妻と夫の年齢差が大きすぎる点に違和感があると指摘されました。

ただいずれのケースも実態を調べてみると、実際に批判している人はそんなに多くありません。一部の意見を切り取った「こたつ記事」によって、炎上がつくり出されているといえます。

企業側の対応も変わってきました。これまでは炎上したら即、その広告やキャンペーンを取り下げる場合が多かったのですが、最近では「これはつくられた炎上では」と考えるようになってきています。自分たちが本当に悪いことをしたのか、検証してから対応するという流れです。

企業に求められる対応は高度化

倉沢:各社とも「炎上慣れ」をしてきて、ちゃんと対処できるようになってきているということでしょうか。

西山:大手企業に限っていうと、その傾向はあると思います。ただやはり、その他多くの会社は炎上にさらされると「どうすればいいんだ」とあたふたしてしまいます。対応自体が高度化している点も無視できません。

倉沢:高度化といいと?

西山:判断が難しくなっているということです。先ほども触れたように、昔であれば炎上した場合「自分たちの発信に何かしら問題があったのだろう」と判断することができたのですが、今は企業側が問題になるようなことをしていないにもかかわらず炎上する、あるいは炎上していないにもかかわらず炎上したと書かれる、みたいな現象が起きているわけです。

それに対して企業側がどう判断するのか。これは以前に比べて難しい部分が増えていると感じます。

西山 守: マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

倉沢 美左:東洋経済 記者

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