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優等生だったドイツがここまで「凋落」したなぜ それでも政府には危機感がない不思議

東洋経済オンライン / 2024年12月25日 8時20分

今回のテロ事件では、州と連邦が権限を分け合う競合的連邦制を採用しているため、責任の所在が不明確で州が独自の立法法や行政権を持つため、治安対策実行の効率性が妨げられていることが指摘されている。

実際に子どもの犠牲を含むテロが発生したにも関わらず、いまだ解明されていないことが多いのも国全体で問題を把握することが行政の連邦と州政府の二重構造によって困難が生じている側面も否定できない。

ドイツはさらに東西ドイツ統一以来、最大の危機に直面している。それを実感しているのはドイツのビジネスマンたちだ。

ドイツ経済は停滞が5年も続き、新型コロナ禍前の成長トレンドが維持された場合と比べ、今や5%も縮小している。ロシア産の安価な化石燃料が得られず、フォルクスワーゲン(VW)とメルセデス・ベンツグループが中国勢との競争で悪戦苦闘している。

与党議員には危機感は感じられない

ヨーロッパ版ブルームバーグはドイツの「国家の競争力低下は、全世帯が年間約2500ユーロ(約40万円)の損失を被ることを意味している」と指摘する。

ドイツ連邦議会(下院)で16日、ショルツ首相の信任投票で不信任が信任を上回った。首相の敗北に伴う解散・総選挙は国家再生の大きなチャンスと見られるが、ショルツ氏を含む与党議員の危機感はほとんど感じられない。

筆者は、危機感のなさはドイツの政治家の過信にあると見ている。それが証拠に来年2月の総選挙に向け、指導部選出は代わり映えがせず、国家が直面する衰退局面に対する懸念の声は政治家からは聞こえてこない。

肌で感じにくい、いわゆる「緩慢な衰退」が始まっているということだ。今回のテロは危機感を目覚めさせるものだったが、経済の重心は確実にアジアに移行している。

現在のドイツには、ベルリンの壁崩壊後の統一によるドイツの再生に取り組んだ時のような国民の結束はない。移民問題をめぐって分断され、ポピュリズム政党が確実に勢力を伸ばしている。世界的に評価の高かったメルケル前政権だが、彼女が進めたロシア、中国への東方政策は、今となっては大きな誤算だった。

危機感の薄さは日本も似ている?

来年2月で次期政権を担う最有力政党のキリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首の打ち出す政策は、直面する危機的状況打開に向け、どこまで社会保障負担を減らし、小さな政府実現につながるか経済界は疑問視している。

それに対中国の経済対策で目に見えた政策が打ち出されておらず、「手遅れ」感もある。緩慢な衰退、平和ボケ、政治の停滞は敗戦国、日本にも類似性があり、危機感のなさまで似ている。

イデオロギーに固守する左派は自らの不人気について自覚症状がなく、さりとて中道右派もドラスティックな改革を行う手段を持っていない。誰がドイツを救い、ひいてはヨーロッパを救えるのか、いまだ答えは見えていない。

安部 雅延:国際ジャーナリスト(フランス在住)

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