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飼い主が切望「泡を吹いて死んだ」愛猫の死の真相【再配信】 獣医病理医がすすめない「ネコの飼い方」の結果

東洋経済オンライン / 2024年12月26日 8時10分

おまけに自由に出歩くことができる外飼いのネコの場合、外でどのような毒物にさらされたのか飼い主が見ていないので、判断がとても難しいのです。

摂取した毒物は農薬か除草剤?

獣医病理医として、死亡した動物の胃の内容物や、毒物が含まれている可能性のある肝臓、腎臓、筋肉、血液などのサンプリングはします。しかし、その段階で原因が明らかにならなければ、そこが現状、病理検査の限界であることは多いのです。

ただ、このネコが飼われていたのは周囲に田んぼが多い地域であり、日常的に家の外を出歩いていたとのことですから、ぼくの経験上、原因となった毒物は農薬か除草剤、あるいは何らかの有毒植物ではないかと推測できました。

農薬はともかく、近年製造されている除草剤は生体への害は少ないのですが、農業の現場では、数十年前から農家さんが所持されていた毒性の強い除草剤や殺虫剤がいまだに廃棄されずに保管されていることがあります。

茶トラのネコがこれらの物質で中毒を起こし、急死した可能性は十分に考えられます。

ネコの誤飲や中毒といった事故は、思いもよらぬタイミングで起きます。農薬のような明確な毒物にかぎらず、ぼくたちの身の回りに普通にあるタマネギ、アボカド、ユリ、チョコレート、コーヒー、タバコなども、ネコにとっては危険な毒となります。

家の中で起きた場合は何を口にしたかの推測ができ、まだ対処のしようもあるでしょう。しかし、外に出ているネコの場合は、何に触れ、何を口にしたかがまずわかりません。

胃に物が残っているならまだしも、口にしたのが液体であれば特定は困難を極めます。中毒症状が出るまでの時間も、毒物によってまちまち。原因物質が特定できなければ、有効な治療も難しくなります。

病原体を家に持ち込むことも

この茶トラのネコのケースでは死因の可能性から除外しましたが、外飼いされているネコが感染症を起こし、重篤化してしばしば死に至ることもあります。

例えば、ネコが外に出て病原体を保有している野良ネコと交尾やけんかをすれば、猫免疫不全ウイルス感染症や猫白血病ウイルス感染症といった、さまざまな感染症の病原体に感染する危険があります。

ネコがネズミやカラスなどの野生動物を捕食したり、蚊やダニなどの病原体を媒介する動物と接触したりすれば、それらが持っている病原体にも感染する可能性があります。

そして、この中のいくつかの病原体は、ネコだけでなく人間にも感染するのです。

「ネコは外を自由に出歩けたほうが幸せだろう」という考えは、ネコへの愛情からくるものでしょう。ただ、獣医療に従事している者としては、「外を自由に出歩けるネコは、完全に室内で飼育されているネコよりも不幸になる可能性が高いのですよ」と言わざるをえません。

愛情だけで動物は飼えません。ネコを大事に飼いたいのであれば、飼い主さんにはこのような知識をしっかりと持っていただきたいと思います。

ぼくたち人間も、できることならなるべくけがをせず、病気にならないように過ごしたいですよね。ネコにも健康で長生きしてもらいたいなら、安全な家の中で飼うのが一番良いでしょう。

後編(愛猫を失った男性の「ネコは外が幸せ」という誤解)は、こちらからお読みいただけます。

中村 進一:獣医師、獣医病理学専門家

大谷 智通:サイエンスライター、書籍編集者

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