日本郵便とヤマト「120億円訴訟」に至った言い分 物流サービスの「大同団結」が危うい事態に
東洋経済オンライン / 2024年12月26日 7時30分
日本郵便の担当者は「10月から取り組みを始め準備していたが、ヤマトからの荷物がほとんどなかった」と説明する。
ヤマトは移管に伴い顧客が離反
移管に伴う顧客の離反はヤマトにとって想定以上だった。ここは見通しが甘かったといえるだろう。
メール便もネコポスも顧客流出が続く。宅配便も苦戦し、2024年度の中間決算(4~9月)で150億円の営業赤字に転落。苦境を受けて、停止の申し入れに至ったという事情だった。
ヤマトはクロネコゆうパケットの移管を問題視した理由を「従前より配達までの日数が延びてしまう事態が発生している」としており、それ以外の公式な主張を避けている。
日本郵便とは役員を含めてかなりの回数の協議をしてきたはずだが、なぜ完全移管を目前に控えた10月になって停止を申し入れたのか。完全移管について法的な義務はないと主張した真意などは見えない。
仮に移管を停止できたとしても勝ち筋は薄い。ヤマトの自社戦力は2トン、4トントラックが中心で小型荷物の投函には不向きだ。小回りの利くバイクを駆使する日本郵便の機動力は上回れず、だからこそヤマトは移管を決意したはずだった。
単なる2社提携にとどまらない
物流業界は長年、安値での荷物獲得競争を繰り広げてきた。ライバル同士だった大手2社の全面的な協業は、安値競争の時代が終わり、人手不足で荷物を運べないリスク、業務の効率化、環境問題へ対応していく象徴的な動きとみられていた。単なる2社提携にとどまらない重要な意義があった。
日本郵政の増田寛也社長は、定例会見で「ヤマトとよく協議し、乗り越えなくてはならない。社会的な要請に応え、大手で協業の精神を出さないといけない」と言及するなど、今後も協議を続ける姿勢だ。
日本郵便はかつて日本通運の宅配便事業「ペリカン便」を吸収したが、初日から大量の遅配が生じた苦い経験を持つ。大手同士の提携や業務の移管にトラブルはつきものなのだ。
このまま頓挫すれば、逆に「変われない物流業界」を示すことになりかねない。両社とも冷静な視点が欠かせない。
田邉 佳介:東洋経済 記者
-
- 1
- 2
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
日本郵便、ヤマト運輸を提訴…小型薄物荷物の運送委託巡って
レスポンス / 2024年12月24日 17時5分
-
日本郵便執行役員「司法の判断を仰ぐしかない」、ヤマト運輸に120億円の賠償求め提訴
読売新聞 / 2024年12月23日 20時46分
-
日本郵便、ヤマト運輸を提訴 120億円の損害賠償求める 委託の停止受け
ITmedia NEWS / 2024年12月23日 18時52分
-
【速報】日本郵便がヤマト運輸提訴を発表 配達委託の見直しによる損害賠償請求
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年12月23日 16時10分
-
ヤマトと日本郵便「令和の大同団結」が泥沼化 「こねこ便」も火種に、日本郵便は訴訟の準備中
東洋経済オンライン / 2024年12月20日 7時30分
ランキング
-
1船井電機会長の即時抗告を却下 破産手続き巡り、東京高裁
共同通信 / 2024年12月26日 21時52分
-
2企業の新規株式公開伸び悩む…5年ぶり90社割れ、大型上場目立ち新興・中小は見送り
読売新聞 / 2024年12月26日 23時30分
-
3女川原発、営業運転を再開=福島第1と同型で初―東北電力
時事通信 / 2024年12月26日 18時46分
-
4「1億総推し活時代」ブームで増える"不安と悩み" 独自調査で判明した「10~70代」のリアルな本音
東洋経済オンライン / 2024年12月27日 7時40分
-
5コロナ禍から大復活!? ANAホールディングスの今期の業績は…投資するなら「株式一択」なのか?
Finasee / 2024年12月27日 8時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください