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EUがiPhoneの「AirDrop」の公開を要求する背景 USB-Cに続き独自技術開放を迫る

東洋経済オンライン / 2024年12月27日 11時20分

240Wまで流すことができるUSB-Cコネクターを、流れる電力の小さなiPhoneで使うことはかならずしもメリットばかりではない。大電力を必要とするコネクターと、30Wぐらいまでの電力を流すコネクターを分けておくことは安全性において意味がある。しかし、結局アップルは欧州の圧力に耐えられなかった。

これに味をしめて、欧州は次の要求を突きつけてきたというわけである。

西海岸のテック企業の力を削ぐ

そもそも、欧州委員会は、なぜ執拗にアップルを攻撃するのだろうか?

アップルが開発した技術を、アップルが個人情報を守るために利用するのは当然だと思うのだが、欧州委員会は、なぜGoogleやMeta、場合によっては中国企業を利するような情報公開を迫るのだろうか? そのことで得をする欧州企業は多くないというところも不思議な点だ。LightningがUSB-CになってもEUはほとんど得しなかったと思うし、今回の件についても同様だ。EUはアップルの競争力をとにかく削ぐことに執心しているとしか思えない。

1990年代以降の情報革命において、その中心地になったシリコンバレーを擁するアメリカは多くの既得権益を得ることになった。Windowsを作ったマイクロソフト、検索サイトをほぼ独占的に運用しているGoogle、ECで独占的な立場にあるAmazon、SNSで個人情報を収集するMeta(旧Facebook)などが、巨万の富を生み出し、つまりは基本的にアメリカが世界の市場を席巻するようになった。今や、世界時価総額ランキング10位以内のうち8つがアメリカ企業で、そのうち7つが西海岸のテック系企業となっている。

後れを取ったヨーロッパ諸国はEUとして団結して、EU市場を背景に、無理難題でもなんでもふっかけて、西海岸テック系企業の力を削がなければならない……というのが、DMAのやっていることだ。

デバイスのOSも、インターネットの検索も、決済手段(VISAの本社はサンフランシスコだし、マスターカードも、アメリカン・エキスプレスもアメリカ企業だ)も、アメリカに握られたままでは、インターネットを介して買い物をしたり、アプリやコンテンツを購入するたびにお金がアメリカに落ちていく。これではヨーロッパ諸国に勝ち目はない。

F1などのモータースポーツや、オリンピックなどのスポーツにおいてもそうだが、勝ち目がなくなってくると「不平等だ」とルールを変更するのはヨーロッパ諸国の常套手段ではある。「インターネットに関するすべてをアメリカに握られて、対等に競争するのが困難」というのは、日本や中国にとっても同じこと。戦略という意味で考えると、DMAが理不尽だろうがなんだろうが、EUの意見に賛同した方が日本にとって「得」という側面はなくはない。

なぜ、独自開発の技術を公開しなければならないのか?

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