中国の農家が「ドローンで作物空輸」の驚く発想 現場の工夫で広がる用途、DJIは専用機を開発
東洋経済オンライン / 2024年12月27日 20時0分
中国の農業の現場でドローン(無人機)の応用分野が広がり続けている。当初は農薬の散布から始まり、今では種まき、肥料の散布、養殖池への飼料投入などにも日常的に使われるようになった。
【写真】DJIの農業用ドローン「T100」は最大85キログラムの貨物を吊り下げて運べる
そこに新たに加わったのが、果実などの作物をドローンに吊り下げて空中輸送する用途だ。
「吊り下げ運搬は農業用ドローンの重要なアプリケーションの1つになった」。中国の民生用ドローン最大手、大疆創新科技(DJI)の農業用ドローン部門である大疆農業(DJIアグリカルチャー)の開発エンジニアは、12月11日に開催したメディア向け説明会でそう強調した。
先駆者は山間部の果物農家
背景には、農業用ドローンの性能向上により運搬可能な重量が増えたことがある。それに目をつけた山間部の一部の果物農家が、輸送の便が悪い山の上で収穫した柑橘類などをロープでドローンに吊り下げ、麓まで運び始めたのだ。
「わが社としては、そのような使い方は推奨しなかった。なぜなら、それらのドローンは貨物の吊り下げ運搬を想定した設計ではなかったからだ。飛行中に(ロープで吊り下げた荷物が揺れて)過大な慣性が加わった場合、ドローンが制御不能になり墜落するリスクがあった」
大疆農業のグローバル・マーケティング部門の責任者を務める瀋暁君氏は、そう振り返る。
だが中国の農家の間では、ドローンによる吊り下げ運搬の需要が高まる一方だった。そのため大疆農業は、(ユーザーのニーズに応えるため)最初から吊り下げ運搬に対応した新型ドローンの開発に着手した。
そして11月25日、大疆農業は新製品の「T100」シリーズと「T70」シリーズを発表。これら2機種には吊り下げた貨物の揺れを抑える特別な姿勢制御プログラムが組み込まれ、T100は最大85キログラム、T70は同65キログラムの貨物を空輸できる。
山間部の果物農家にとって、ドローン導入の効用は絶大だ。例えばネーブルオレンジの名産地として知られる湖北省秭帰県では、かつては山の上で収穫した果実を人力または(農業用の)軌道運搬車で運び出していた。
用途と需要はさらに拡大
だが、山間部の農村は(過疎化のために)人手が不足しており、人海戦術はもはや成り立たない。軌道運搬車はレール敷設の初期コストの負担が重く、(レールを通す空間を作るため)一部の果樹を伐採しなければならないデメリットもある。
そのため、秭帰県ではドローンによるネーブルオレンジの吊り下げ運搬が自然発生的に広まり、徐々に軌道運搬車に取って代わりつつある。
山間部だけではない。中国南部の農村では、マンゴーやバナナなどの(付加価値が高い)経済作物をドローンで空輸する農家が増えている。東北地方の広大な稲作地帯では、(田植えに使う)苗の運搬にドローンが使われている。
「農業用ドローンの空輸能力のさらなる向上により、吊り下げ運搬の用途と需要は向こう2~3年間右肩上がりに増えるだろう」。大疆農業の開発エンジニアは、そう予想している。
(財新記者:方祖望)
※原文の配信は12月13日
財新 Biz&Tech
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