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世界で最も劣悪な「台湾マグロ漁船労働」の実態 日本の食卓を飾る水産物の知られざる人権問題

東洋経済オンライン / 2024年12月28日 8時10分

2つ目は、活動する国において、パートナーとなる団体や支援者を見つけ、労働者および移住者としての権利を獲得すること。

そして3つ目は企業に対するキャンペーンの展開です。台湾ではWi-FiキャンペーンをFOSPIと連携して進めています。

──台湾漁船でのインドネシア人など外国人労働者の実情についてお話しください。

ハディ 私たち外国人船員労働者は台湾から遠く離れた船上で10カ月から1年にわたって過酷な労働を強いられています。陸上とのコミュニケーションの手段もなく。孤立状態にあります。漁の際には十分な食料も休息も取ることができず、時には20時間以上も船上でぶっ続けで働かされることがあります。事故や病気も日常茶飯事ですが、適切な医療を受けることもままなりません。

アドリさんという船員は、釣り針が目に刺さって失明したのに船長は病院に連れていくことを拒否しました。アドリさんは現在、視力と生計手段を失ったことに対する補償を雇用主や人材派遣会社に求めています。しかしいまだに何の成果も得られていません。

劣悪な待遇に労働者がストライキも

2024年初め、ある船で事件がありました。出港して数カ月後、船内の食料が底を突き、労働者は賞味期限切れの野菜や釣りえさを食べるしかなくなりました。足が腫れ上がり、腹痛がひどくなったシックリさんという労働者は治療の機会を求めましたが、船長はそれを拒否しました。シックリさんは欠勤によって賃金が減ることを恐れ、病気でも働き続けました。

悲惨なことに、虐待に耐え続けたシックリさんは3カ月後に船上で死亡しました。この時も船長は陸に戻ることを拒否し、シックリさんの遺体は船内の冷凍庫で2カ月間も放置されました。あまりにもひどい事態に憤った労働者が船上でストライキを起こしました。こうした実例は氷山の一角です。

──ほかにどんな実例がありますか。

2024年8月、別の漁船に乗っていた10人の船員は、15カ月にわたって給料を受け取れず、無給のまま働かされました。船員は月550米ドルの賃金を約束されていましたが、1年以上漁を続けても1ドルも受け取っていませんでした。それどころか賃金を受け取る前に再び海に出て働かなければならないと言われました。彼らの家族は生活のために借金をせざるをえなくなり、ある船員の家族は自宅を売ることになりました。

こうした問題を解決するために私たちは労働者の組織化を進めています。先ほどの10人の労働者は上陸してFOSPIに相談し、交渉の末に最終的に支払いがなされました。

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