「住みたい街」として有名な流山市で起きる不穏 井崎市長肝煎りの観光振興企業が経営不振に
東洋経済オンライン / 2024年12月28日 14時0分
では、事業収入はどれだけ見込めるのか。年間2万人の来場を目標に掲げる白みりんミュージアムの入場料は大人300円。仮に目標を達成したとしても入場料収入は年間600万円程度にとどまる。
外資系コンサル会社で観光事業に従事した経験もある吉河社長に対して、「白みりんミュージアムの訪問客を街全体に広げてほしい」と期待する地元の声もある。だが、2億円以上の予算をかけるだけの「観光推進効果」を得られるかどうかは未知数だ。
市が流山本町の観光推進を掲げるのは、NTDが初めてではない。ツーリズム推進課が設置される4年前の2012年にも、大正12年建築の足袋販売店を改装したイタリアンレストランとベーカリーをオープンさせた。市からの補助金を得て経営を始めた会社は茨城県に本社を置く民間企業で、オープン当初は「流山本町の新名所になる」と期待が寄せられた。しかし、予想したほどの売り上げは立たず、運営会社は撤退してしまう。
NTDの社長は門脇氏から吉河氏に交代したが、辞任した理由は業績不振だけだったのか。現在も市から公の説明はない。
こうしたことが続き、流山本町では井崎市政の評価が二分している。地元の歴史的経緯を見てきた住民からは「現在の流山の発展は、歴代市長の秋元大吉郎氏や眉山俊光氏が築いた基盤があるから。井崎市長は宣伝がうまいだけ」という手厳しい指摘がある。
人口増は「井崎市長の成果」なのか
井崎市長が市長に就任したのは2003年。メディアに登場する際はたいてい「流山おおたかの森地区」をはじめとするTX沿線部の開発事業が高く評価される。確かにTXの開業は井崎市長就任後の2005年だが、流山への誘致が決まったのは1985年の秋元市長時代。現在は大型ショッピングモールやマンションが立ち並ぶ「流山おおたかの森地区」の開発も、流山市からUR都市機構へ事業要請があったのは1991年、土地区画整備事業が始まったのは2000年で、どちらも秋元・眉山時代だ。
TXの開業が沿線地域全体を押し上げたのは間違いない。流山市以外でもTX沿線に位置する埼玉県八潮市や同三郷市、千葉県柏市、茨城県つくば市などでは、やはり人口が増加している。観光振興策の顛末を間近で見てきた流山市民らが「マーケティング力だけで街が発展するならば流山本町の観光事業も成功するはずではないか」と井崎市長の手腕を疑問視するのも無理はない。
こうした市民の厳しい視線を、井崎市長本人はどう感じているのか。
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