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一青窈が問う「闇バイトや無敵の人」犯罪の深層 【後編】犯罪心理学者・出口保行さんを訪ねて

東洋経済オンライン / 2024年12月29日 10時0分

しかも彼らは闇バイト組織に自分の個人情報が知られてしまい、「家族に危害を与えると脅され逃げられなかった」と言いますよね。普通に考えれば、だからと言って他人のものを奪い、最悪、命まで奪うことが許されるわけはないのに、「仕方がなかった」という言い訳が最後まで通ると思っている。

一方、今まで何度か犯罪を経験してきた人は、そんな言い訳が通用するわけがないと知っています。それが最近の犯罪者との大きな違いだと思います。

犯罪予測ができない「無敵の人」

一青:そうだとすると、想像力があれば、犯罪に手を染める前にブレーキをかけられますよね。その想像力を養えるように導くことができればよいのでしょうか。

出口:その通りです。自分の選択した行動がどのような結果につながっていくのかを想像できるようになることが大切です。

ただ、安倍元首相を撃った人、京都アニメーションに火を放った人、電車の中で刃物を振り回して人を切りつけた人のように、「無敵の人」と呼ばれるような犯罪者も出てきています。

普通の人は「リスク」と「コスト」が想像できるから、一線を越える前に踏みとどまることができるものです。リスクというのは、これをやったことで捕まってしまうというリスクの高さで、コストというのは、捕まるかどうかは別にしても、自分がやったとわかることで失うものの大きさです。失うものとは、信頼、尊敬、友だち、家族などです。

普通、コストとリスクが大きかったら、犯行に及ぼうとは思いません。従来の犯罪はこの枠組みで説明することができました。ところが「無敵の人」が出てきてからは、これで説明がつかなくなってしまった。

「無敵の人」の犯罪は人前で行われて捕まるに決まっているし、全部失うことがわかっているわけです。それなのに犯行に出る。もはやリスクとコストでは、抑えが利かないようになっている。それも今の犯罪の大きな特徴だと思います。

それに「無敵の人」は先ほどの闇バイトに関与している人たちと一緒で、犯罪履歴がないから犯罪予測ができないのです。

犯罪を未然に防ぐためには想像力が大切

一青:多くの犯罪者に会ってきた出口先生は、それでも人を愛すべきだと思いますか。

出口:もちろんそう思います。正直言って、刑務所の中には憎たらしいことを言う人がいっぱいいます。心理学で「好訴性」という言葉があるのですが、「一日一訴」と言って、一日一回何かを訴えないと気がすまないような人もいます。そんな人は、何を言っても訴えるから、やっかいに思うことがあります。

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