インドでは「排泄行為」がとんでもなくカッコいい 日本人のようにコソコソトイレに行かない
東洋経済オンライン / 2024年12月30日 9時40分
料理の際に出た生ゴミや食べ残しは、そこらに放り出しておけば、野良犬や山羊や虫が集まってきて、数分後にはすっかりキレイになっている。ここでは自治体指定のゴミ袋も生ごみを分解するコンポストも必要ない。
彼らの手元に残るごくわずかなプラスティックゴミたちも、夜の焚き火であっという間に処理されてしまうし、僕が持ち込んだようなペットボトルは水の容器やトイレのお供として大変重宝されることになった。とにかく、無駄がないのだ。
水は? 水道がなくてどうやって生活するの? という読者の悲痛な叫びが聞こえる。この家から2キロほど離れた場所に井戸が存在するのだ。この水を、家の脇に無造作に置かれている水瓶というか素焼きのポットで汲みに行くのは、朝イチの女性たちの仕事だ。
これはなかなかに骨の折れる仕事だと思い、のちに僕もペットボトル片手について行ったことがある。子どもたちも嬉々としてついてくる。道中は歌を歌ったり、冗談を言い合ったりして、楽しい時間となる。
あの木の実が美味しいとか、あのサボテンから滲み出る白い液体を舐めたら死んじゃうよ、などなど、いろんなことを教えてくれる。突然空を大きな鳥が横切る。それを見て子どもたちは大はしゃぎする。その鳥は、「スガン・チリ」という名がつけられていると教えてくれた。訳すと、「吉祥の鳥」。道中でその鳥が前を横切ると、運気が上がるのだとか。
そう、何もない沙漠の景色の中に、彼らはあらゆるものに名を与え、物語を付与し、豊かなイメージの世界をつくっている。沙漠は「死の世界」ではなく、なんとも芳醇な生命の結晶体だった。
水汲みは社交とエンターテインメントの時間
井戸には周辺のムラから集まってきた女性たちがいて、情報交換をしたり、世間話に花を咲かせていたりしていた。なんとも楽しそうだ。これが、リアル井戸端会議か……。
井戸端の世界は、パルダー(教科書的には、イスラーム教徒の女性たちを外部の男性たちの視線から保護するために隔離する習慣として説明されている)の規制によって、なかなか家を自由に出られない女性たちの、最も解放的な空間のように思われた。
水汲みは、彼らの生活に彩りをもたらす社交とエンターテインメントの時間なのだろう。実際に、彼女らは家を出てしばらくすると、さっと布を外して素顔を見せてくれた(見知らぬ男性が近づいてきたら、彼らはまた顔を隠すのだが)。
彼らは頭に布でつくられたドーナツ状のクッションを乗せ、ヒョイと水の入った壺を乗せると、背筋を伸ばして颯爽と歩いていく。色のない沙漠の世界に、水を運ぶ女性たちの、原色で、ともすれば少しどぎつい色合いの衣装(ラージャスターニー・ドレス)が、見事に映える。多くの写真家たちが狙ってきたフォトジェニックな光景だ。
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