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「介護は子がするもの」と主張する親への関わり方 年末年始に親の意向を聞く際のトラブル回避術

東洋経済オンライン / 2024年12月31日 11時0分

「最期を家族で一緒に過ごしたいなら、自宅に帰ったほうがいい」という主治医の言葉を受け、家族はAさんと自宅で一緒に過ごす決断をしました。

ところが退院直後、Aさんの体全身にひどい発疹が出てきました。これは脳出血の後遺症や心不全などとは別の新たな問題で、きちんと治療をしないと深刻な事態を招きかねません。

Aさんの在宅医として関わっていた筆者は、「病院での治療が望ましいかもしれません」と家族に伝えました。もちろん、今回の入院は延命治療のためではなく、発疹の治療であり、治る見込みがあるものです。

しかし、Aさんはかねて「延命治療はしないでね。できるだけそっとしておいてね」と家族に伝えていたこともあり、家族には「もともとの病気で限られた時間しかないなか、これ以上の入院は避けたい」という思いがありました。

余命が限られているなかで、このまま家でできる治療を続けるのか、それとも一度病院に戻って、発疹の治療を受けるのか。

本人の意思を知ることが難しいなか、判断は家族に委ねられました。

結局、この家族はAさんの意向をくみ、家で過ごすことを決めましたが、機会があるたびに、「どう過ごしたいか」という本人の意向を聞くことは、このような判断に迷うような状況においても、大事な判断材料として家族を後押ししてくれます。

意向を聞くことは、亡くなったあとの家族の助けにもなります。

家族は、本人が亡くなられたあとも「本当に正しいことをしたのか」「本人の気持ちにそっていたのか」という気持ちにさいなまれます。そういうときに「それでよかったんだ」という気持ちにしてくれるのが、生前のときに聞いていた言葉なのです。

親の意向を聞くときのヒント

話を、親の意向の聞き方に戻しますが、こうした話題は単刀直入には切り込みづらいもの。そこで親の意向を聞くときに参考になりそうなヒントを3つご紹介します。

1つめが、話のフックとして世間の話題を絡めてみること。

具体的には、著名人や芸能人の病気や訃報の話題などにふれ、「もし急にこんなことになったとしたら、何か後悔することってあるかな?」「最期はどんな迎え方がよいとかある?」などと話を振ってみるのです。

こういう遠いテーマだと、あまり深刻にならずにすみます。この際に「私ならこういうふうに過ごしたいかなぁ」などと、自分も気持ちを伝えてみるのもいいかもしれません。

2つめが、「何をやりたいか(やってほしいか)」を聞くよりも「何をやりたくないか(やってほしくないか)」を聞いてみること。例えば「これからの生活をどう過ごしていきたい?」と聞かれるより、「介護を受けるなら、これだけは嫌っていうことある?」と聞かれたほうが、答えやすいものです。

嫌なことを話してくれたら、それがなぜ嫌と思うのかも、ぜひあわせて聞いてみるといいでしょう。

そして3つめは、会話のテンポを親に合わせること。これは会話術というよりも聞き方のテクニックになります。

年齢とともに、耳が遠くなり、理解力が落ちてくるのは、誰しもに訪れる老いの変化です。もし親が何度も聞き返してきたり、質問の意図と違う趣旨のことを話し始めたりしたとしても、怒ったり途中で遮ったりせず、最後まで聞きましょう。相手が自分の話を聞いてくれていると思うと、親も安心して話すことができます。

もちろん、本人の希望はその時々で変わってくるもの。意向は変わって当然だからこそ、繰り返し話していくことが大切です。

(構成:ライター・松岡かすみ)

中村 明澄:向日葵クリニック院長 在宅医療専門医 緩和医療専門医 家庭医療専門医

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