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長嶋修が語る「2025年不動産市場の行方と提言」 2025年注目は「セカンドベスト」の不動産

東洋経済オンライン / 2025年1月1日 11時0分

そもそもこうしたエリアは、一戸建てにもマンションにも価格高騰の波は届いていない。不動産価格の上昇が始まった当時からすでに足並みは揃っていなかったものの、市場の二極化、三極化がさらに拡大し始めたのが2024年だったといえるだろう。

2025年、注目の「セカンドベスト」とは

インフレや金利上昇は、"強い不動産"をますます強くし、"弱い不動産"をさらに弱める一因となる。したがって、2025年はさらに市場の格差が拡大することになるだろう。

"強い不動産"とは、言わずもがな都心・駅前・駅近・大規模・タワーに代表される好条件の不動産ということになってくるが、2025年は「セカンドベスト」の不動産も注目される。

「セカンドベスト」とは、ベストな立地に次いで価値が維持されると見られるエリアを指す。具体的には、首都圏でいえば23区の駅徒歩10分から15分圏内に加え、千葉・神奈川・埼玉の中でも国道16号圏内の徒歩7分から10分圏内のエリアになってくるだろう。

こうしたエリアは、都心や駅近の立地に不動産を持てない人の需要が流れてきていることから、中長期的にも大きく価値が落ちることはないとものと見られる。

ただし、中長期的な視点を持つのであれば、立地以外の要素にも目を向けたいところだ。

2024年10月には火災保険料の参考純率が引き上げられ、水災補償の保険料はリスクの程度に応じて細分化する改定が加えられた。近い将来、保険料だけでなく、不動産の担保評価にも自然災害リスクが影響することになるだろう。

加えて、マンションは管理状態にも留意したい。すでに管理状態が取引価格に影響している事例は見られているし、管理計画認定制度やマンション管理適性評価制度の広まりなどもあって、今後一層、マンション管理の重要性が認知されていくはずだ。

2025年4月からは、すべての新築住宅に省エネ基準適合が義務づけられることから、省エネ性能をはじめとする住宅性能が価値を左右することにもなっていくだろう。

資産価値の維持・向上をどこまで求めるか

ここまで論じてきた「ベスト」や「セカンドベスト」というのは、あくまで資産価値を重視した場合に限られる。人によってライフスタイルやライフプランは異なり、趣味嗜好や夢、理想もまったく違う。

資産価値の維持・向上を目的に住まいを持つのであれば場所を選ぶ必要があるが、それだけが選択肢ではない。

資産価値の維持・向上に振り切るもよし、夢や理想に振り切るのもよし。理想を追求したうえで、できる限り資産価値が維持する見込みの住まいを選ぶことだってできる。

働き方や暮らし方、そして価値観が多様化する今、住まい選びにおいても万人に共通する正解などもはや存在しない。

2025年は、不動産市場だけでなく世界情勢や私たちの暮らしが大きく変わる過渡期になると見ている。

詳しくは2024年刊行の拙著『グレートリセット後の世界をどう生きるか 激変する金融、不動産市場 』(小学館新書)をご覧いただきたいが、今後は住まいも仕事も生き方も、より「本質」が重視されていくようになるはずだ。自分にとっての「ベスト」はなんなのか。住まい選びの際には、ぜひ考えてみていただきたい。

長嶋 修:不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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