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セブン苦戦でも大ヒット「さばの塩焼」がすごい 総菜売り場を支える中堅メーカーの秘密とは?

東洋経済オンライン / 2025年1月2日 7時30分

しかし、STIの主要商品の冷凍回数は1回のみ。アメリカやチリの子会社が買い付け、頭や骨を除いた後、日本へ輸送するときだけ冷凍する。

国内の各工場でも食材のカットから味付け、火入れまで、残りの調理の全工程が行われる。製造を自社で完結できるため、余計な冷凍、解凍の工程がなく、品質を維持できるのだ。

セブン商品本部のデリカテッセン(総菜)部でセブンプレミアムの開発を担当する野口裕介氏は「原材料の調達から加工、調理まですべて自前でできる会社はSTIくらいしかいない」と話す。

大手コンビニでも、さばの塩焼に「違い」

実は、冷凍回数が少ない点は、消費者にもわかるようになっている。

類似品を手に取ると、パッケージに「保存方法の変更者」や「保存温度帯変更者」と記載されたシールが貼られている。これはメーカーが製造後に一度商品を冷凍し、その後、卸売業者などが冷蔵温度帯に温度変更、解凍したことを知らせる表示だ。

STIの商品は製造後に冷凍していないため、このシールが貼られていない。大手コンビニのさばの塩焼の中でも、シールがないのはセブンだけだ。

セブンの野口氏は「メーカーにとっては大量生産し、冷凍してストックしたほうが手間が省ける。しかし、STIは味を優先して、手間をかけてでも発注が来た分を毎日製造し、冷凍せずに供給してくれている」と語る。

こうした都度生産も、調理の全工程を1工場で完結しているからこそできる業といえる。

STIのユニークな点はほかにもある。ポイントは規模と技術だ。全国のセブンには1日約2000万人の客が来店する。メーカーには巨大な需要に応える生産体制が求められ、中小零細企業では難しい。まして単独での供給となれば、なおさら規模が必要になる。

では大手水産企業やメーカーに委託すればよいかというと、そう簡単ではない。魚は大きさや脂のりなど個体差が大きく、焼き魚や煮魚のように形や見た目も重要な商品の場合、目視による確認や手作業での微調整が不可欠だ。完全な機械化が難しく、効率が要求される大手では扱いづらい。

焼き魚の場合、皮目の焼き具合にもムラが出る。そこで、STIではラインの端で作業員が目視で確認し、ガスバーナーで焼き目をつけ直している。

加工前の魚を規定の重さにカットするのも作業員の感覚が不可欠だが、工場の責任者は「完璧にできるようになるまで2~3年はかかる」と語る。STIの幹部は「うちは大手競合がやりたがらない部分にあえて力を入れている。それなりの設備を持ちながら、これだけ人手をかけられるメーカーはそう多くない」と話す。

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