47歳で死去「出版王・蔦屋重三郎」の謎多い人生 江戸を舞台にした大河「べらぼう」が始まる
東洋経済オンライン / 2025年1月4日 9時0分
重三郎は、江戸の吉原で生まれます。そして、前述のように、本屋を開業。吉原関連の書物の出版をスタートするのです。
時を経るに従って、出版される本の種類も多様化していきます。洒落本、黄表紙、狂歌本、絵本、錦絵なども出版するようになります。
その過程では、多くの人との出会いがありました。例えば、大田南畝(1749〜1823)との交流。南畝は、戯作者(小説家)・文人として有名ですが「狂歌会の第一人者」でもありました。重三郎はこの南畝と親交を深めるのです。
重三郎は、戯作者の山東京伝(1761〜1816)の書物も多く出版しています。しかし、京伝の著作(洒落本『仕懸文庫』、『錦の裏』、『娼妓絹籭』)が、幕府による風紀取締の摘発を受け、出版した重三郎にもピンチが訪れました。罰金刑を受けたのです。
時は、寛政3年(1791)。老中・松平定信による「寛政の改革」(1787〜1793)が行われていた頃でした。
寛政の改革は「享保の改革」(8代将軍・吉宗の時代)、「天保の改革」(老中・水野忠邦が推進)とともに、江戸時代の三大改革と呼ばれています。ちなみに、松平定信の祖父は、徳川吉宗です。定信は、享保の改革を理想として、財政再建・農村復興を目指しますが、その一方で風俗矯正・出版統制を厳しくしました。重三郎はその煽りを受けたといえるでしょう。
私の勝手な予想ですが、ドラマにおいて定信はどちらかといえば、「悪役」として描かれるような気がします。今回どのように描かれるのかも、注目です。また『べらぼう』では、これまで大河で描かれなかった人物が多数登場すると思います。
さて、重三郎は、洒落本・黄表紙などを出版しただけではなく、浮世絵版画も出版。東洲斎写楽・喜多川歌麿といった現代においても有名な浮世絵師の浮世絵版画を出版するのです。
こうした謎めいた人物との絡みをどう描くのかということも注目されます。重三郎の成長と挫折、そして関連する人物、時代背景を丁寧に描いていくことによって、奥行きのあるドラマとなるように思います。
新人発掘の名人とも言われた
滝沢(曲亭)馬琴、十返舎一九、喜多川歌麿、東洲斎写楽など多くの才能を世に送り出した重三郎は「新人発掘の名人」とも称されます。魅力的な人物であったとも言われており、横浜流星さんがその魅力をどのように演じるのかも見所の1つでしょう。
江戸一流の出版社として実績を残した重三郎。ですが、その生涯は短いものでした。重三郎の没年は、寛政9年(1797)。47歳で病死してしまうのです。薄命そして地味目の人物の生涯を1年間かけて、どのように描いていくのか。これは、脚本家の手腕が試される場であると思います。
(主要参考引用文献一覧)
・松木寛『蔦屋重三郎』(講談社、2002)
・鈴木俊幸『蔦屋重三郎』(平凡社、2024)
濱田 浩一郎:歴史学者、作家、評論家
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