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今の日本には「専門医」より「かかりつけ医」が必要 受診先を1箇所にまとめる利点は意外と大きい

東洋経済オンライン / 2025年1月6日 16時0分

複数のクリニックで受診している人が、「病名がわからないから、どこに行けばいいかわからない」ような体調不良が起きたときに、「ここかな?」と思って、いつも受診しているクリニックに行ったところ、「うちでは診られない」と断られてしまう……。

このようなことは日常茶飯事です。

医師がみんな断ってしまったら、最終的に誰が診るのでしょうか。

「どんな症状でも、まず診察」する真のかかりつけ医が必要です。

患者さんの健康を守るのが医師の仕事です。そして患者さんにとっては、まずは近くのクリニックで受診するのが理想でしょう。そこから診察・治療がスタートするのです。

にもかかわらず「かかりつけ医がいない」「かかりつけ医が誰かわからない」「自分(患者さん)はかかりつけ医だと思っていたのに、医師のほうはそう思っていなかった」という事態が蔓延しています。

医学生、研修医の方々、これから開業しようと思っている医師の皆さんは、この実情をよく考えてほしいと思います。「なんでも診る」「いつでも診る」医師こそが、厚生労働省のいう「かかりつけ医」ではないでしょうか。

あなたの地域に住む、次のような高齢者の姿をイメージしてください。

75歳、1人暮らしの男性。
高血圧・脂質異常症で2カ月に1回、内科クリニックに通院している。ほかに、腰痛で整形外科クリニックに月1回、過去に軽い脳梗塞になったことがあるので、経過観察として脳神経外科クリニックに月1回、白内障など眼の病気の定期検診のために眼科クリニックに月1回通院している。
最近は少しもの忘れも出てきて不安がある。歩くときに膝が痛くなってきた。運転免許証はすでに返納し、通院は歩きやバス。子どもは遠くに住んでいる。

さて、この状況で私からいくつか質問するので、考えてみてください。

Q 「なんとなく体調が悪い」場合、男性はどこのクリニックを受診すると思いますか?
Q 「なんとなく体調が悪い」のに、いつも通院している内科で「異常なし」と言われたら、男性はどうすると思いますか?
Q もの忘れが進行して今より心配になってきたら、男性はどこに行くと思いますか?
Q 不調があって受診をしたいつもの内科で「検査が必要ですね。でもうちではできないので、○○病院に紹介状を書きます」と言われ、その病院が遠くにあった場合、男性は1人で行くことができると思いますか?
Q 夜間や休日に持病の腰痛が急に悪化したら、男性はどうするでしょうか? いつもの整形外科でレントゲンを撮影して、「異常はない」と診断され、痛み止めを処方されたものの、よくならないと感じたときにはどうするでしょうか?
Q 腰や膝の痛みで4つのクリニックに思うように通院できなくなったら、男性はどうすると思いますか?
Q いつも通院している内科の院長先生が高齢などを理由に急に閉院したら、男性はどうすると思いますか?

20年後も変わらない日本の地域医療

矢継ぎ早に問われて不快になってしまったら申し訳ないのですが、この問いに「たしかに、こうなったら不安だろうな」「どうしたらいいか、わからないだろうな」と思った方も多いはずです。

これこそが、今の、そして医療体制が変わらなければ10年後、20年後も変わらない日本の地域医療の光景です。

複数のクリニックに通院し、普段と違う不調が起きたときに「どこに行ったらいいか」「どうやってそこにたどり着けるか」困る人があふれる事態があるのです。

「いつでも、なんでも、だれでも、まず診る総合診療クリニック」が自宅の近くにあれば、こういう問題を減らすことができます。

今すぐ全国にそういうクリニックを増やす必要があると提言しているのは、このためです。専門クリニックも大事ですが、それ以上に、人を診る、総合診療かかりつけ医のほうが大事なのです。

菊池 大和:きくち総合診療クリニック

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