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入社後3年以内に部下が退職、その「症例」と対応策 上司に心がけてほしいポイントを3つ紹介

東洋経済オンライン / 2025年1月6日 9時0分

入社3年目までの社員にやる気を持ったまま働いてもらうために、上司はどうしたらいいのでしょうか(写真: kou / PIXTA)

「入社前に期待したほど、仕事が面白くない……。採用してもらえる今のうちに、早めに転職してしまおう」

このような理由で転職する新入社員は少なくありません。『Z世代の社員マネジメント 深層心理を捉えて心離れを抑止するメソドロジー』を上梓した小栗隆志氏は、入社1~3年目を「スタートアップ期」と位置付け、「この時期の新入社員は、入社前の期待と現実のギャップが離職理由になりやすい」と言います。

厚生労働省のデータでも、大卒新入社員の入社3年以内の離職率は32.3%と高い数値になっています。離職率低減を図るうえで最初に乗り越えるべきハードルは、スタートアップ期にありそうです。

1回目:若手社員が突然退職、不条理を解き明かす"カギ"


2回目:「転職当たり前」の時代に育てたい部下の"We感覚"
3回目:本記事

スタートアップ期に陥りやすい3つの症例

前回お伝えした通り、オンボーディングを通じた「一体化」には5~10年程度の時間がかかる。今回から、入社1~3年目、3~5年目、5〜7年目に期間を分けて、オンボーディングのポイントをお伝えしていきたい。

【画像】入って3年目までの社員が離職してしまうのはなぜ? 原因と対処法まとめ

まず入社1~3年目の「スタートアップ期」は、慣れない言葉や慣習など、組織・仕事の文化になじみきれていない時期といえる。その中で新入社員は、組織や仕事における自分の「役割」や「可能性」を見出そうともがいている。

第1回でお伝えした「個人人格と組織人格」の観点でいうなら、入社までの意思決定は個人人格が主導しているが、入社すると途端に組織人格が求められるようになる。社会人期間の短い新入社員は、組織人格としての「役割演技力」が身についていないので、もがき苦しむのは当然だ。

この時期は、「入社前の期待」と「入社後の現実」のギャップが離職原因になることが多い。要は「思っていたのと違った」というわけだ。このような前提を踏まえてスタートアップ期の離職へと至るまでによくある、新入社員の心境変化を見ていく。

スタートアップ期の新入社員は、個人人格において以下の3つの「症例」に陥りやすい。

●意味(Meaning)不足

仕事に意味(Meaning)を感じることができず、やる気を喪失している状態である。「やりたいことと違う……」という心の声が大きくなるのが1つ目の症例だ。

就職活動では事業や仕事に魅力を感じ、面接では「入社したらやりたいこと」を力強く語った。内定を勝ち取り、期待を胸に入社したものの、実際に働いてみると、思っていたほど仕事が面白くない。この状態が続くと、職場や仕事から逃げたいと考えるようになる。

この症例に陥っているときは、仕事内容にミスマッチを感じるだけでなく、上司や同僚との人間関係がうまくいっていない場合も少なくない。

気の合う仲間とだけ付き合っていればよかった学生時代と違い、社会人になると組織人格としての役割演技力を求められるようになる。このシフトがうまくできず、個人人格と相いれない振る舞いを求められることに辟易(へきえき)としている新入社員は多いはずだ。

Meaning不足に陥っている新入社員が、初期段階で発するアラートが「職場の異動希望」だ。

上司からすれば「あと1年くらい踏ん張っていれば、仕事が面白くなってくるぞ」と言いたいところだが、Z世代と言われる昨今の新入社員は「タイパ重視」と言われることも多く、短い時間でも成果や満足を得ることを求める傾向にある。

「1年も我慢するぐらいなら、他の会社に行ったほうがいい」と転職を選ぶ人は少なくない。

評価不足と力量不足の「症例」とは?

●評価(Value)不足

仕事の評価(Value)に対する納得感がないために、やる気を喪失している状態である。心の中で、「もっと評価されると思ってたのに……」という不満が大きくなるのが2つ目の症例だ。

就職活動で内定をもらうと、内定先企業の先輩社員からあの手この手で決断を迫られる。「君なら絶対に活躍できる」と声をかけられることも多いだろう。

こうして、自信満々で入社したものの、自分が思っていたほど評価されないという現実に直面する。特に他のメンバーが褒められたり認められたりしているのを目の当たりにすると、自分は相対的に認められていないと感じるものだ。

人は周囲からの承認を得たがる生き物である。Z世代も同様で、仕事において「自分を認めてほしい」という欲求を持っている。それゆえ、「褒められたい」「評価されたい」という欲求が満たされないと、徐々に不平不満を溜め込んでいく。

Value不足に陥っている新入社員が、初期段階で発するアラートが「評価への不満」だ。「自分の働きを見てくれていない」「正しく評価してもらえない」といった不満を表すようになる。

上司としては、きちんと見て、正当に評価しているつもりでも、本人は自己認知と他者認知のギャップにさいなまれる。この状態が続くと、「自分にはもっと活躍できる場所があるはずだ」と考え、転職という決断に至る。

●力量(Power)不足

力量(Power)が追いついていないために、やる気を喪失している状態である。心の中で、「ついていけない……」という不安が日に日に募るのが3つ目の症例だ。

多くの新入社員は、学生時代に多かれ少なかれ自分なりの成功体験を積み重ねている。しかし、社会人になって仕事の難しさや自分の至らなさに直面すると、これまでの自信は打ち砕かれ、「自分はこの会社でやっていけるのか……」と思い悩むようになる。

特に、この症状に陥りやすいのが、新しい仕事を任されたときだ。初めての仕事であれば、失敗するのも無理はないが、失敗を上司から指摘されると、ますます自信を失っていく。

Power不足に陥っている新入社員が、初期段階で発するアラートが「仕事の拒否」だ。失敗が続くと自信を失い、「私にはこの仕事は無理です」と仕事を選り好みするようになる。

仕事を拒否されても、会社組織である以上、上司がある程度強制的に仕事を頼まざるを得ないケースもある。しかし、こうした状態が続くと、新入社員は「虐げられている」と感じ、嫌気が差して退職してしまう。

部下に成功体験を重ねてもらうには?

このように、スタートアップ期にある新入社員は慣れない環境でもがき苦しんでいる。この時期を乗り越えるためには、組織人格で役割を演じることによって成功体験を重ねるプロセスが欠かせない。

「できた→褒められた→面白い」という体験を繰り返すことで、3つの症例から解放されていくのだ。

筆者は、この体験を「Meaning」「Value」「Power」の頭文字を取って「MVP体験」と呼んでいる。「MVP」というと、華々しい成果をあげなければならないように聞こえるかもしれないが、ここで言う「MVP体験」は「自分で自分を褒めたくなるような成功体験」と捉えていただきたい。

スタートアップ期の新入社員に、MVP体験を重ねてもらうためにはどうしたらいいだろうか。上司に心がけてほしいポイントを3つ紹介したい。

●仕事をスモールステップにする

まずは、「できた」という実感を持ってもらうことが大切だ。無理に仕事のハードルを上げず「小さな仕事を任せて、やりきったら褒める」を繰り返していこう。そのためには、仕事を細分化するタスクマネジメントと、即時にフィードバックする仕組みづくりが必要になる。

●仕事の評価ポイントを多様化させる

次に、できたことに対して「褒められた」と思ってもらうようにする。分かりやすい成果をあげた人を褒めるのは簡単だが、新入社員は裏方業務が多く、スポットライトが当たりにくい。

だからこそ、上司には「縁の下」に目を向け、目立ちにくい行動にスポットライトを当てる意識が求められる。業務のスピードアップやミスの減少など、さまざまな評価ポイントを用意して新入社員を褒めるようにしたい。

●仕事に意義付けをする

仕事ができて褒められた後は、『仕事が「面白い」』と思ってもらうことが重要だ。そのためには、新入社員が仕事に意義を見いだせるように導いていく必要がある。

上司としては「この仕事は地味に見えるけど、会社を大きなリスクから守っているんだよ」「これを実現できると、社会にこういう価値を提供できるよね」などと伝え、仕事に意義付けをしていきたい。

「できた→褒められた→面白い」のサイクル

入社1~3年目の部下を抱えている上司には、「Meaning不足」「Value不足」「Power不足」という3つの症例を押さえたうえで、「MVP体験」を意識したオンボーディングを実践していただきたい。

この実践によって「できた→褒められた→面白い」のサイクルを繰り返していけば、スタートアップ期の離職を減らすことができるだろう。

次回は、入社3~5年目の「ペースメイク期」に起こりがちな心境変化と、その対応策について解説していきたい。

小栗 隆志:リンクアンドモチベーション フェロー

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