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アクティビスト銘柄で顕在化する「後始末リスク」 手元資金が急減し、巨額還元の撤回も困難に

東洋経済オンライン / 2025年1月6日 7時30分

東洋証券をはじめとする対面営業型の証券会社は、これまで株取引の仲介で得られる手数料が収益の源泉だったが、顧客の資産管理から得られる収益に軸足を置くビジネスモデルに移行している。そうした中で余剰資本の圧縮に取り組む証券会社が増えており、2025年3月期には丸三証券やアイザワ証券グループも同様の理由で特別配当を予定している。

吐き出される成長投資資金

もっとも、大規模な株主還元を通じて株価が上がるからといって、稼ぐ力を含めた企業価値全体の向上が図られるわけではない。

東洋証券は10月に発表した新中計で、預かり資産残高1.5兆円や中国株取引の強化に取り組むことでROE8%を目標に掲げた。このハードルは相応に高く、本来ならば今回の自己株買いに投じた80億円を含め、新中計で示した成長戦略に資金を使いたいところだ。

だが、その財源を株主還元に回してしまった。これまで蓄積した利益剰余金117億円の多くを取り崩したことで、東洋証券の今後の成長にはむしろブレーキがかかりかねない。

東洋証券は2023年12月、大株主のUGSアセットなど4社を「共同協調関係」にあると認定している。とはいえ、引き続き「対立相手」であることに変わりはない。4社が保有していた30%程度の持ち分に対して、今回買い取ったのは半分程度。すべてを買い取ることはできなかった。全量買い取れるほどの余剰資本がなかったともいえ、この点も東洋証券の置かれた経営環境の厳しさを物語っている。

大規模な株主還元が株高をもたらし、それによってアクティビストの退場を促したケースは2024年にもう一例あった。アパレルメーカーのダイドーリミテッドだ。

同社でも、7月4日に大幅な増配と自己株買いを発表した直後に株価が高騰。そのタイミングで大株主だったアクティビストファンドのストラテジックキャピタルがすべての保有株を売却した。

模索が続く攻略法

株主還元による株高によってアクティビストが退場し、経営への圧力こそ弱まるが、大規模な株主還元を撤回できるわけではない。

ダイドーの山田政弘会長兼CEOは11月に開いた2025年3月期中間決算会見でこの点を問われ、「簡単に(巨額還元を)覆すわけにはいかない。今の株主から(還元ではなく)成長投資に使ってくれという声が出れば考える」と答えた。大規模な株主還元でアクティビストを退出させた後も、その「後始末」に悩む姿がにじむ。

東洋証券においても、たとえアクティビストらが保有株をすべて売却したからといって、大規模な株主還元の撤回は難しいのが現実だ。

「アクティビストに出ていってもらうため」の還元だとは説明しておらず、あくまで適正な資本コストと株価を意識した経営を検討した結果だとしているからだ。

一時600円を超えていた東洋証券の株価は、大株主からの買い取りを発表した直後に値を下げ、その後は550円前後で推移している。巨額還元を撤回すれば、数年前の低い株価水準に戻ってしまう可能性もありそうだ。

2024年に株主総会をにぎわせた2社がくしくも似たような状況で「後始末」に苦しむ。アクティビストとの攻防に攻略法はあるのか。2社の事例は2025年に向けた教訓とも言える。

高橋 玲央:東洋経済 記者

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