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免税事業者に圧力?「インボイス制度」導入の背景 いまさら聞けないインボイス制度の超基本(上)

東洋経済オンライン / 2025年1月6日 18時0分

郷:へ? 私が出版社に請求書を出すとき、「消費税10%」ってちゃんと書いていますけど。

小山:請求者の「登録番号」を書かないと「適格請求書」とはみなしません、というルールになったんです。

郷:登録番号? あ、インボイス事業者として登録したら番号をもらうんですか?

小山:そうです。

郷:で、クライアントに送る請求書が「適格請求書」じゃないとなにが起きるんですか?

小山:ざっくりいえばクライアントが損をします。だからインボイス事業者として登録していないフリーランスはクライアントから敬遠されて、仕事が減るとか、値下げ圧力がかかるんじゃないかという不安があって、反対の声が上がったんです。

フリーランスが免税事業者に戻る現象

郷:実際、制度がはじまってみて、どんな感じなんですか?

小山:インボイス事業者に登録したフリーランスが免税事業者に戻るという現象が起きているみたいです。

郷:え!! じゃあ、私は免税事業者のままでいいです。以上、お悩み終了。

小山:まあ、それでもいいですけど(笑)、もう少し詳しく説明しておきましょう。

そもそも消費税とはなにかという話からしますね。郷さんが文房具屋さんで100円のペンを買ったら、消費税として商品の10%にあたる10円を上乗せしてお店に支払いますよね。私たちが日本国内で商品を買ったり、サービスを受けたりするときに徴収されるのが消費税ですから。

郷:薄~く、広~くかすめとる作戦。

小山:そういうこと。でも、消費者である郷さんが日々の買い物をすべて記録して、1年に1回、まとめて消費税を払うのは大変ですよね。だからその徴収を、文房具屋さんが代わりにやってくれているだけなんです。その10円は店主の晩酌代にしてもらうために支払ったわけではなく、国に納める税金として支払ったんです。

郷:そういわれてみるとそうだ。

小山:だから本来、消費税を受け取った事業者は、「消費税を一時的に預かっている」だけ。税金徴収の代行者として。

郷:ということは……企業はちゃんと消費税を国に払っているんですか?

小山:年1回か、年2回、年4回、年12回でちゃんと払っています。で、こうやって預かった消費税を納税する事業者のことを「課税事業者」っていうんです。法人でもフリーランスでも、年間の売上が1000万円を超えた年の2年後は自動的に課税事業者になります。

郷:で、免税事業者は……。

小山:お客さんから預かった消費税を納税せず、売上として計上していいんです。こちらは逆に、年間の売上が1000万円を超えない小規模事業者が対象。小さな文房具屋さんなら、郷さんが支払った10円が店主の晩酌代になっている可能性は大いにあると(笑)。

免税事業者に対して「間接的に圧力」

郷:ということは……国は「インボイス事業者」って格好いい名前をつけていますけど、実質的には「課税事業者」のことじゃないですか。

小山:そうなんです! ただ免税事業者の制度を強制的になくしたら自民党は選挙で落ちるだろうし、そうかといって、「国の予算がピンチなんです! みんな課税事業者になってください! ご協力お願いします!」って言ったところで免税事業者は聞く耳を持たないですよね。

郷:当たり前です(笑)。

小山:だから「インボイス制度」という、免税事業者に対して「間接的に圧力がかかる仕組み」を導入したと解釈すると、この制度の理解が進むと思います。

後編:インボイス制度を導入しないと損する職種があるってホント?

小山 晃弘:税理士法人小山・ミカタパートナーズ代表

郷 和貴:ブックライター

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