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中途採用「前職からのお土産」に潜む重大リスク 安易に「経験を活かして」と言ってはいけない

東洋経済オンライン / 2025年1月7日 8時50分

2015年にはさらに改正され重罰化し、また持ち込まれた企業も刑事罰の対象となっています。

現在は、前職から「企業秘密」を「お土産」として持ち込むことは犯罪行為になり得ると認識を改めさせる必要があります。

(2)中途採用の面接時・入社時点での警告

中途採用する企業の情報管理に対する問題意識が高くとも、転職者の問題意識が低いと、転職者は従来の感覚のまま前職の「企業秘密」を「お土産」として持ち込んでくる可能性があります。なかには、転職者がいち早く成果を出したいからという自分の利益のために前職の「企業秘密」を持ち込み、中途採用された企業で使用、開示することもあります。

こうした持ち込みリスクを防ぐには、中途採用の面接時・入社時点で、「前職の『企業秘密』や『営業秘密』は絶対に持ち込まないでください」と警告をすることが必要です。

安易に「経験を活かして」と言ってはいけない

しかし、採用面接に際して、「これまでの知識と経験をわが社で活かしてください。期待しています」などと安易に言っていたりすると、転職者に「警告は建前」と受け取られる可能性があります。

建前ではなく「本気」であることを伝えるには、そもそも中途採用の面接時に誤解されるような表現をしないように慎重である必要があります。

また、退職の意向を示した者と退職後の秘密保持契約を締結する際のポイントと同様に、

①転職者を中途採用し秘密保持契約を締結する際に、入社に関する書類の締結とは別に、情報管理についての説明の機会を設け、説明の後に秘密保持契約を締結する

②秘密保持契約書に「前職の人事情報、財務情報、技術情報など『企業秘密』や『営業秘密』に類する情報は持ち込まないこと」「わが社ではこれらの情報を使用、開示しないこと」と具体的に記載しておく

ことが必要です(図表)。

③前職の「企業秘密」の持込み、不正使用、不正開示などが発覚した場合には、懲戒解雇の対象になる

ことなども注意しておくと、さらに警告となるでしょう。

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

転職者によって前職の「企業秘密」が持ち込まれていることが明らかになった場合には、ただちにその使用を止めます。場合によっては、当該企業に謝罪し、事実を説明に行くことも必要だと思います。

浅見 隆行(あさみ たかゆき)*公式サイトはこちら
アサミ経営法律事務所代表弁護士。(株)APT、(株)ドラEVER社外監査役。1997年早稲田大学法学部卒業、2000年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2009年アサミ経営法律事務所設立。企業危機管理・リスクマネジメントを中心に、会社法・株主総会・情報セキュリティ(企業秘密・個人情報)・危機管理広報など企業法務全般に取り組んでいる。著書に『判例法理・株主総会決議取消訴訟』(中央経済社、共著)ほか、記事執筆、メディア出演多数。

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