100万マイルGetを目指す弾丸世界一周旅の顛末 予想外のトラブル続出でもリカバリーに奮闘した
東洋経済オンライン / 2025年1月7日 9時0分
50代にして、9日間でエコノミークラス25フライト、ホテルのベッドで寝られたのは計7時間という過酷な世界一周を経験したトラベルジャーナリスト、橋賀秀紀さん。きっかけは、スカンジナビア航空の100万マイルキャンペーン(以前の記事参照)でした。
トラブル続出だった世界一周旅の様子について、前編に引き続き後編をお届けします。
ふらふらの体でヨーロッパを離脱
夜行バスでたどり着いたパリから、エールフランスでジュネーブ(スイス)に到着。5時間20分乗り継ぎの間、夜行バス明けの体をおして、レマン湖沿いを中年男2人で散策する。
【画像】「計画通りに進まず急きょ変更した行程も多数」 筆者が経験した実際の世界一周旅
この日の平均気温は3.5度。レマン湖は鉛色の厚い雲で覆われていた。観光客などいるものか……と思いきや、意外に多い。なぜこの時期のジュネーブに来たのかは謎である。寒さと疲労から市内観光は90分が限界だった。
【写真】世界一周旅(後編)の様子を写真と画像で。計画した旅程と、実際の行程の違いも(11枚)
ジュネーブからジェッダ(サウジアラビア)経由、シンガポールまではサウジアラビアの航空会社サウディアに搭乗する。
ジェッダ行きの機内では、隣のムスリムの青年がパーソナルモニターに映るメッカの映像を見ながら、祈りの言葉を唱えていた。こちらもマイレージの「修行」をする身だが、あちらは修行が一生続く身。そう考えると、この旅行の苦痛がわずかに和らいだ。
前代未聞のミスに冷や汗
アジアに入ったら、「いざとなれば乗りなおしができるから安心だね」とA氏とはお互いに言い聞かせていた。だが、ここで筆者がまたミスを犯す。今までの人生、旅行中に失敗を繰り返してきたが、前代未聞のものだ。
予定では、シンガポールからガルーダ・インドネシア航空でジャカルタ(インドネシア)に行き、厦門経由・台北行きの厦門航空に乗り継ぐ予定だった。
だが、なんと1日後の便を予約してしまっていたのだ。しかも「これ、明日の便です」、と係員に指摘されるまで気づかなかった。いままで海外旅行で一度も犯したことのないミスが、よりによってここで出るとは……。
愕然とするものの、大きなトラブルもこの旅行で3度目。まずは30分後に出る山東航空で厦門へ行こうとするも、スマホを操作しているうちに、直前で予約期限切れとなる。
再度、航空券の手配と検索に追われ、結局ジャカルタ空港近くのホテルで寝られたのは3時間。もはや、時差ぼけすら感じられないほどの睡眠不足である。
空港ではつねに次のフライトの手配や状況の把握などに追われ、落ち着けるのはネットがつながらない機内のみという状態が続いた。
苦労しても挑戦するモチベーションとは
結局、アジア内はベトナム航空とケニア航空以外すべて組み直しという大工事となった。一部はキャンセルできたが、それでも追加の出費は20万円以上におよぶだろう。
だが、15社で100万マイルもらえるこのキャンペーン。1社でも欠けると10社以上で10万マイルと、ボーナスが10分の1となってしまう。こうなると、意地でも15社乗るしかない。15社搭乗達成したという、他の旅行者の報告も焦燥感を煽った。
トラブルのあったジャカルタからは、クアラルンプール→ホーチミンシティ→バンコク→台北→厦門→バンコクと飛び、バンコクから広州へはケニア航空に乗る。
このケニア航空の以遠権フライト(経由地から目的地まで、第三国間で旅客を輸送するフライト)であるバンコクー広州路線は、今回のキャンペーンに参加した多くの旅行者が利用していた。
筆者が乗ったときにも、キャンペーン目的とおぼしき人が数十人は乗っていた。日本人やアメリカ人の参加者と情報交換したが、やはり共通の関心はディレイとマイルの加算である。このような“同好の士”との出会いもそのモチベーションを強固なものとした。
では、このキャンペーンに参加している人はどのくらいの人数になるのだろうか。Xで参加を明らかにしている人だけで数十名。そのほか、筆者の知人だけで10名近く参加していることから推察すれば、日本人だけで100名以上は参加しているのではないだろうか。世界全体なら数千人に及ぶだろう。
バンコク発のケニア航空は8時間遅れの午前2時半、広州に到着した。次に搭乗する中国東方航空の寧波行きは朝7時半発。ホテルに行くには時間が短すぎる。
結局ターミナルにあるマッサージチェアの隙間で仮眠をとることになった。空港の床で寝る歳でないことは分かっているが、背に腹は代えられない。
寧波から杭州までは中国の新幹線で移動。今はTrip.comのサイトで直前でも予約ができる。かつての中国の鉄道といえば、長蛇の列で並んだ後に「没有」(ない)と無慈悲に言われるのが定番だった。その頃を知る世代としては、感慨深い。
そして、杭州からソウルのコリアンエアーに搭乗し、9日間25フライト19カ国の弾丸世界一周エコノミークラス旅行は終了した。
これだけ短期間に数多くの航空会社のエコノミークラスに搭乗することはもはやないだろう。まず感じたのは、どの便もおしなべて搭乗率が高かったことだ。各社ともにシートコントロールが向上し、空席だらけの無駄なフライトを飛ばさなくなっている。
また、空港の入国も簡素化していた。EUは当然だが、ビザ免除がはじまったばかりの中国も、2日連続で入国したにもかかわらず、質問1つなかった。入国といえば時間がかかることで知られるアメリカも、MPCというアプリを入れていたことから、2回とも数十分待ちで入国できた。
その一方、ヨーロッパはどこも空港が狭く、混雑していることが気になった。対照的にアジアはどこもターミナルが新しいうえに広く、快適だった。
肝心の機内サービスだが、シートはどこも大差がない。そのなかで、今回のキャンペーンとは無関係の航空会社ではあるが、成田~ロサンゼルス間のZIPAIRで提供していた完全無料Wi-Fiサービスは重宝した。
「加算されない…?」旅が終わっても続く悪夢
あまりに飛行機に乗り続けたためだろうか。帰国してから半月ほどたったが、いまだに乗り遅れやマイル未加算の夢を毎晩のように見るのだ。
なお、15の航空会社のうち、2社は年を越しても加算されていない。スカンジナビア航空には、未加算の修正申請が殺到し、同社はすでに締め切りの期限を2回延長している。
同行したA氏は今回の旅について次のように語る。
「フライトの数の多さに加えて陸路移動まであり、今回の経験は"現代の猿岩石"だった。だが、エコノミーとはいえ機内での飲食サ
A氏は60代前半だが、旅行の最後まで快調でまだまだいけると張り切っていた。「この年齢だから……」とリミットを勝手に設定してはいけないのかもしれない。これも、今回の旅で学んだ教訓である。
【写真】世界一周旅(後編)の様子を写真と画像で。計画した旅程と、実際の行程の違いも(11枚)
当初の計画と実際の違い
橋賀 秀紀:トラベルジャーナリスト
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