なぜJALはパイロットの飲酒問題を繰り返すのか 意識改革ならず、再発防止策はまた機能せず
東洋経済オンライン / 2025年1月7日 7時30分
年末も押し迫った2024年12月29日、韓国内で発生した航空機事故としては史上最悪の179人が死亡する事故が起きた。さまざまな要因が重なっての惨事とみられるが、確定的な原因はまだ不明だ。が、バードストライク(鳥の航空機エンジンなどへの衝突)以降、チェジュ航空2216便の操縦席ではパイロットらが最後の瞬間まで一瞬たりとも気の抜けない状況に置かれていたことは想像に難くない。
【写真】「90度」が話題に。2024年5月の「厳重注意」を受けて国交省航空局局長に頭を下げる鳥取社長
緊急時、パイロットの瞬時の判断が大勢の乗客・乗員の命を左右することは言うまでもない。それだけに、パイロットは厳格な身体検査と技量審査を年2回以上受け、普段の生活でも規程の順守が厳しく求められる。だからこそ、平均年収も約1780万円(2024年賃金構造基本統計調査)と、全職種の中でも突出して高い。
ところが、パイロットをめぐる信じられない不祥事が日本航空(JAL)で発覚した。
パイロットが過剰飲酒で出発遅延、隠蔽も
2024年12月1日のオーストラリアのメルボルン発成田行きの774便でパイロット3人のうち機長(59)と副機長(56)が前日に過剰飲酒し、副機長は酒気帯び状態で出勤。アルコールが検知されなくなるまで空港で待機したことから出発が3時間以上遅れたというのだ。
滞在先の飲食店で注文した酒はスパークリングワイン1杯ずつとワイン3本。JALの規程(乗務12時間前の体内アルコール残存量が4ドリンク以下に自己制限)を上回っていた。機長は腹痛と偽って出勤を遅らせ、副機長はパイロットがそろって受けるはずの正式な検査を行わず、アルコールがゼロになるまで1人で自主検査を繰り返していた。
しかも、2人は口裏を合わせ、成田到着直後は「飲酒は赤ワイン1本」と申告し、過剰飲酒の隠蔽を図っていた。繰り返しヒアリングする中で3日、ようやく2人は事実を告白した。
国土交通省は12月27日、JAL社に対して「業務改善勧告」を出した。
JALは5月にもアメリカでの滑走路誤侵入や機長の飲酒トラブルなどで国交省から「厳重注意」を受け、鳥取三津子社長が「私がリーダーシップを持って信頼回復に邁進する」と誓ったばかり。9月まで乗務員の滞在先での飲酒を禁止していたが、10月に解禁したばかりだった。
今回の業務改善勧告では、12月20日の成田発サンフランシスコ行きの便でも副操縦士が乗務日を勘違いして出勤が遅れ、自主検査だけでアルコール検査を済ませた事案が判明している(飲酒はなかった)。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
機長飲酒で日航に改善勧告 「隠蔽し悪質」と国交省
共同通信 / 2024年12月27日 16時33分
-
相次ぐJAL機長の飲酒問題で矢面に…鳥取美津子CA出身社長に問われる手腕(小林佳樹)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月21日 9時26分
-
日航機長の飲酒「厳正に対応」 国交相、注意後の再発で
共同通信 / 2024年12月13日 9時59分
-
JAL機長が飲酒ダンマリ、検査には「誤検知」主張 豪路線で3時間超遅延...会社側「欠航すべきだった」
J-CASTニュース / 2024年12月11日 10時57分
-
日航機長2人飲酒で3時間遅延 国交省に報告、処分検討
共同通信 / 2024年12月10日 23時59分
ランキング
-
1中居正広CM削除「ソフトバンクの判断」が正しい訳 「示談してたのに…」は企業には一切関係ない
東洋経済オンライン / 2025年1月8日 8時40分
-
2キャベツ1玉“1000円超え”も…2025年も値上げラッシュに 閉店危機の飲食店も
日テレNEWS NNN / 2025年1月7日 22時16分
-
3絶頂の転職エージェントが衰退する致命的構造 転職活動者にはおおむね好評でも気になる批判の声
東洋経済オンライン / 2025年1月8日 10時0分
-
4なぜ、最低賃金ニュースは“経営者の悲鳴”ばかり? 労働者の声が消えるオトナの事情
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月8日 6時10分
-
5買収禁止命令に激怒、日本製鉄が米大統領を提訴 理不尽な米国政府にも引かない強気の勝算は
東洋経済オンライン / 2025年1月8日 7時40分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください