プロの料理人も涙「グランメゾン・パリ」のリアル 「もう一度見たい」とシェフに言わせるリアリティ
東洋経済オンライン / 2025年1月8日 14時0分
たとえば『グランメゾン東京』肉料理のシーンで出たバヴェットステーキ(番組での料理名は「真っ黒な牛ハラミのロースト」)。ドラマではソース・ボルドレーズ(赤ワインを主体にしたソース)にマリネしたバヴェット(牛ハラミ)をローストし、仕上げにマデラ酒のソースをかけている。
これも、近年実際に「カンテサンス」で提供されている料理だ。久住栞奈(中村アン)が「低温調理じゃないんだ」とつぶやいていたが、なぜこの料理がこのシーンで選ばれたのだろうか。
岸田さんは、師であるパリ「アストランス」のパスカル・バルボ氏とともに「低温長時間ロースト」を行うシェフとしてかつて名を馳せた。岸田さんが行う低温調理は肉のジューシーさを保ち、素材が持つ風味や個性を引き出す、技術の要る調理法だ。
しかし近年は手軽な低温調理器が普及したこともあり、低温調理を施された肉料理に出会うことが増えた。もちろん、岸田さんが施す低温調理とは別物だ。
今回登場したバヴェットステーキはその揺り戻しともいうべき、フライパンで焼く昔ながらの調理法だ。素材の温度感や料理のライブ感をより強く感じることができ、だからこそこの料理が新たに生まれ変わった『グランメゾン東京』を象徴するメインとして選ばれたのだろう。一周回ってクラシックな調理法が見直されている現代の風潮を反映したものといえる。
一方『グランメゾン・パリ』で描かれたのはフランス料理という「型」の強さだ。
『グランメゾン・パリ』ではさまざまな国のルーツを持つ人が働いているという設定になっており、映画では彼ら一人ひとりの異なる個性や強みをすべて料理の中に盛り込むことで、伝統あるフランス料理が革新されていく様子が描かれる。
尾花は、かつて自分がフランス料理を志したのは、フランス料理の多様性に対する懐の深さに気づいたからだった、という自らの原点を思い出す。たとえ白味噌を用いてもフランス料理になる。その自由さから新しい料理が生まれるという設定は、現実世界と同じだ。
ドラマに自分の生き方を投影するシェフたち
料理関係者たちは、映画で登場する料理や料理人の生き方に自らの生き方を重ねているようだ。
2019年の連続ドラマでは、毎回、料理人の生き方をめぐるテーマが盛り込まれていた。
たとえば、若手がシェフに努力を認めてもらえないときどう乗り越えるかが描かれた第6回、仕事と家庭の両立を描いた第7回、病気と老い、仕事へのモチベーションをとりあげた第8回など、どの回にも料理人の生活や才能に関する悩みや「あるある」が詰まっていた。
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