愛の告白から「5年後」やっと返事をした彼のホンネ 知り合って10年のアラフォー2人の意外な顛末
東洋経済オンライン / 2025年1月12日 12時0分
初対面から10年、告白から5年。長い歳月を経て交際を始め、その半年後に結婚をしたカップルがいる。九州の地元で、35年ローンを組んで建てた家で2人暮らしをしている佐藤美晴さん(仮名、43歳)と健一さん(仮名、47歳)だ。
Zoom画面の向こうには仲良し兄妹のように似た雰囲気の2人が微笑んでいる。どちらも食べることをこよなく愛し、旅行するときの主目的は現地の美味しいものだという。結婚生活で幸せ太りをしてしまい、揃ってコロコロとした見た目になったらしい。
苦しい恋愛にすがりついていた
手紙で健一さんに愛を告白したのは美晴さんのほうだが、それに至るまでに「クズみたいな男性」と「マザコンな男性」とのやや不毛な交際を経験している。
告白してからも口下手すぎる健一さんからは何の返事もなし。5年後に健一さんから逆告白されたときは混乱して一度は逃げてしまったという。美晴さんは追いかける恋愛が好きな人なのかもしれない。
「大学を出てからは九州内の空港でグランドスタッフとして働いていました。想像以上の激務で、同期入社50人のうち今でも会社に残っているのは2人だけです。仕事が大変過ぎて視野が狭まり、苦しい恋愛にすがりついてしまったのかもしれません」
学生時代からつきあっていたという1歳年上の相手は、憧ればかりを追う「夢見る人」で、大学卒業後も親がかりで習い事を続けていた。早く結婚したかった美晴さんだが、結婚などは言い出せずに彼との夢と半同棲生活を「私が守ってあげる」と思い込んでいたと振り返る。
7年後にようやく終わりがきた。仕事で疲れ果てた美晴さんは会社を退職し、WEBデザインを学べる職業訓練校に通い始める。規則正しい生活を手に入れ、さまざまな背景を持つクラスメイトに恵まれ、今まで2人きりの世界に浸っていたことに気がついた。心身が健康になれば離れるべき人と離れられるという事例だと言える。
「主人(健一さん)と出会ったのもその学校です。何人かと親しくなり、複数で遊ぶうちの1人です。ずっと単なる友だち関係でした」
結婚して子どもが欲しかった美晴さんは、父親の仕事関係のつながりでお見合いをする。相手は11歳年上。実家のある東京で暮らしている人だった。
「私は28歳になっていたので焦りもあって結婚するつもりでいました。一緒に住む家も東京で探していたのですが、その人とお母様との関係を受け入れられずに2年弱で別れてしまったんです」
その男性のいわゆるマザコンな性質が発覚したのは2人での旅行から帰ってきたときのこと。旅先での過ごし方に意見の相違があったことをなぜか彼の母親が把握しており、美晴さんが折れて息子に寄り添うべきだと注意してきたのだ。
「それまでのことも彼はすべてお母様に報告していたようです。キショ!(気色悪い)と思ってしまい、結婚には進めませんでした」
健一さんへのラブレター
当時は東日本大震災の直後で日本国中が動揺していた。それまで定職に就いたことがなかったという健一さんは福島県での汚染土処理作業に応募。戦場に送るような気持ちになった美晴さんは健一さんへの愛に気づく。
「前の彼と別れてからもネットで婚活をしていました。でも、いつも健一さんと比べてしまうんです。私が気取らなくていい人だから……。この人以上の男性はいません」
福島に旅立つ健一さんに美晴さんは「急でごめんね」の一文から始める美しいラブレターを渡した。しかし、健一さんからは何の返事もなかった。なぜなのか。
「嬉しかったのですが、何と答えたらいいのかわかりませんでした」
ポツリポツリとしか話さない健一さん。女性と付き合った経験は学生時代のみで、就職氷河期で定職に就けなかった負い目もあって恋愛や結婚からは遠のいていたと語る。アルバイトで貯めたお金でオーストラリアなどでのワーキングホリデーを楽しんでいた時期もある。
「そんな自分は結婚対象にはならないと思っていました。友だちはいるので、ときどきワイワイガヤガヤできれば十分です」
5年後の告白
福島での仕事は給料の不払いがあって2カ月で打ち切り、戻ってきた地元に腰を下ろす覚悟を決めた健一さん。父親の死という大きな出来事にも直面した。
「父ととりわけ仲が良かったわけではありません。でも、家族が1人いなくなってしまったのはショックでした」
男友だちは気を遣って放っておいてくれた。一方で、美晴さんからは久しぶりに連絡が来た。「お父さまのことを聞いたよ。大丈夫?」と。
「葬儀のことでいっぱいいっぱいだったのでほとんど返事ができませんでした。でも、気を遣ってくれたことがありがたかったです」
半年後、健一さんのほうから美晴さんを「どっかに行こう」とデートに誘った。しかし、美晴さんは素直には受け入れられない。5年前の手紙に返事をもらっていないからだ。
「うやむやにされるのは嫌なので断ったら、珍しく食い下がってきたんです。どうしても一緒に行きたい、と。車の中で付き合ってくれと逆告白されたのですが返事はできませんでした。私は結婚したかったので、主人の広い友だち関係の延長は嫌でした……。もう傷つきたくなかったんです」
それでも健一さんへの愛は残っている。3日後、交際OKの返事をした。結婚願望がないだろう健一さんが相手なので一生独身でいる覚悟をしたという。
「美晴から返事がなかったので3日間もモヤモヤしました」
健一さんは3日どころか5年も美晴さんを待たせたことを忘れ果てているようだ。彼女の悲壮な覚悟をよそに、半年後にはプロポーズしたのも健一さんだ。気持ちが読みにくい人だな……。
死産した娘は2人の初めての共通の大事
なお、美晴さんからもらったラブレターは大切に保管してある。Zoom画面越しに嬉しそうに見せてくれた。横では美晴さんが「いやー、それはヤバい! ハズ!」と身もだえしている。直球勝負の美晴さんと変化球しか持っていない健一さん。性格は真逆の夫婦だが、笑いは絶えないようだ。
美晴さんと健一さんは家族の相性も良かった。一人っ子の美晴さんは母親から溺愛され過干渉されて育った。だからこそ、マザコン気味の前彼には同族嫌悪を感じてしまったのかもしれない。それに対して、健一さんの家族は拍子抜けするほど個人主義的なのだという。
「お姉さんは独身1人暮らしで、お母さんは元気で飄々とした人です。愛情はあるけれど放任主義で、私たちからの電話もあまり嬉しそうではありません。電話が嫌いらしく、いつもオレオレ詐欺と疑われます(笑)」
健一さんとの間に子どもができることを強く望んだ美晴さん。不妊治療に励んで2年半後に娘を授かったが、残念なことに死産だった。美晴さんは話しながら涙を流す。
「不妊治療をしなかったら、こんな気持ちにならずにもっと穏やかに2人だけの生活を送れていたかもしれません。でも、娘は私たちの初めての共通の大事だったんです。戸籍に残してあげることもできなかったけれど、名前を付けて今でも呼んでいます」
お互いがベスト・オブ・ベスト
今は2匹の老犬を2人で可愛がりながら暮らしている。健一さんは半導体関係の技術職を得て、結婚後に正社員となって現在6年目だ。
「主人が5年以上も定職に就いているのも夢みたいだし、結婚生活自体が不思議。今でもパラレルワールドにいるような気分です。もっと早くに結婚できていたらと思うこともありますが、主人との結婚でなかったら続いていなかったかもしれません。私には主人がベスト・オブ・ベストです。主人はどう思っているのかわかりませんけど」
美晴さんが水を向けると、健一さんも「僕も美晴がベスト・オブ・ベストです」と淡々と応えた。なんのひねりもないけれど、なんか面白い。静かでも不思議なユーモアを醸し出す人だ。美晴さんはそこに居心地の良さを感じているのかもしれない。これからも2人は夢のような結婚生活を続けていくのだろう。
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大宮 冬洋:ライター
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