参天製薬の「近視進行抑制剤」に注目が集まる理由 国内で初承認、小児の近視対策に新たな選択肢
東洋経済オンライン / 2025年1月13日 7時30分
スマートフォンの普及、学校教育でのタブレットやノートパソコンの導入。低年齢のうちから電子機器を眺める時間が大幅に増加している。その影響で増加しているのが、近視だ。
文部科学省が実施する学校保健統計調査(2023年度)によれば、裸眼視力が1.0未満の児童・生徒の割合は、小学生で37.8%、中学生で60.9%に上る。10年前に比べて、その割合はそれぞれ7~8%増加した。その原因の8~9割は近視と指摘されている。
近視は治療法が確立されていない一方で、進行を抑制することは可能だ。特に子どもの近視は進行が速く、放っておくと、重度の疾患につながるリスクがある。
そこで、近視の進行を抑制する眼科薬の開発がテーマとなってきた。
国内初の製造販売承認を取得
2024年12月27日、近視の進行抑制剤として国内初の製造販売承認を取得したのが、眼科薬国内最大手の参天製薬とシンガポール国立眼科・視覚研究所であるシンガポールアイリサーチインスティテュートが共同開発した「リジュセアミニ点眼液」だ。
販売開始は2025年春の予定。保険適用の対象とはならないが、1カ月分で4000円程度と比較的手に届きやすい価格設定となりそうだ。
投与対象となるのは基本的に小児で、厚生労働省によると、想定される患者数は36万人程度。それでも、近視研究の世界的権威で、東京科学大学眼科学教室の大野京子教授は、「低年齢の時から早いうちに処置できるため、今回の承認は非常に大きな意味を持つ」と期待を寄せる。
近視は眼軸(眼の奥行き)が伸長し、眼球がラグビーボールのような形状になることで引き起こされる。ほとんどの場合、成人後に進行が止まり、眼鏡やコンタクトレンズによって視力矯正を行うことで日常生活を過ごすことができる。
ただ、近視が進行した「強度近視」になると、眼球の後方にある網膜や視神経にも影響を及ぼし、緑内障や白内障といったより重度の疾患につながるリスクがある。眼鏡などによる矯正が困難となり、場合によっては失明につながる場合もある。
小児期の治療が大切
前述のとおり、近視は若年期における進行が速い。幼少期に近視を発症すると、その分だけ、強度近視につながる可能性が高くなる。大野教授は「軽度の近視でも緑内障を発症する可能性は高くなる。小児期に治療することは大切だ」と指摘する。
これまでも進行抑制の方法がなかったわけではない。特殊なコンタクトレンズを使用したり、今回の承認剤と同じ成分の点眼剤を海外から個人輸入したりする方法があった。ただ、国内の製造販売承認を受けていないため、高額となりがちで、医師の処方のハードルも高かった。
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