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物流危機、3月末に迫り来る「荷物を運べない現実」 「これ以上は残業できない、もう走れない」

東洋経済オンライン / 2025年1月17日 8時50分

ただし、こうした事情を踏まえ、荷主側が納期を調整し、待ち時間が発生しないように工夫するなど仕事の条件を見直しているかというと、そう簡単ではない。荷主にも当然、顧客がいる。リードタイムを変えられないといった理由があるのだ。

「実際には、荷主の都合や荷物の条件に合った運送会社を探すことのほうが多い。運送会社にも譲れない条件があるので、うまく交渉し、調整していくのがわれわれの仕事でもある」(兼田センター長)

今年の3月期末、荷物は運べるのか?

とはいえ、荷主側がいつまでも、こうした対応を続けられるかはわからない。運送会社は必ずしも、厳密な計算の下で動いているわけではないからだ。トランコムの東海エリアマネージャー・上野剛史氏は、今後トラックの空車情報がさらに減る可能性を指摘する。

「運送会社は長距離から近場の運行にシフトしているが、顧客(荷主)の構造まですぐに変えられるわけではない。これから残業時間の調整を迫られる会社もあるのではないか」(上野氏)

規制が適用されて1年目ということもあり、ドライバーの残業をうまく調整できず、1月から3月末にかけて「これ以上は残業できず、走れない」といった状況に陥る会社もでてきそうだ。

もう1つの焦点は運賃だ。前述のように、業界は残業規制による人手不足、人件費の増加が課題だ。加えて車両の購入費、燃料費など、ほぼすべてのコストが上昇し、これまで通りの運賃では利益を確保しにくくなっている。

しかし、2024年は運賃交渉がうまく進んだとは言いがたい年だった。消費の低迷で荷物が少ない状態が続き、宅配業者の間で価格競争が勃発。倉庫での保管から配送まで手がける3PL(物流の一括受託)業者まで波及した。コスト増を吸収できず、大幅減益決算や業績見通しの下方修正が相次いだ。

2024年問題を機に価格転嫁を進め、運送会社が適正な利益を確保できるようにする。ドライバーの待遇を改善し、若い人材に入ってもらう。そんな業界の狙いは、2025年に持ち越しになってしまった。

運べなくなる事態を回避するには?

大手企業の荷主を中心に、価格転嫁を許容する動きは見られるものの、運送会社が希望する運賃を満額もらえるケースはまだ少ない。

運送会社の苦しい事情について、荷主側の十分な理解は得られていないのが実情だ。業界幹部は「業界は閑散期のほうが長く、現場の情報が伝わるまでに時間もかかる。実際に運べなくなる事態が起きないと、荷主も動かない印象を持っている」と語る。

荷物が運べない危機を回避するには、ドライバーなどの賃金や労働条件を改善し担い手を増やすこと。効率化のために投資を進める必要もある。荷主企業の歩み寄りは必須だ。

インフラ崩壊の危機を乗り越えられるか。2025年も正念場が続く。

田邉 佳介:東洋経済 記者

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