1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「なぜ嘘をついてはいけない?」ローマ偉人の教え クインティリアーヌスと三島由紀夫に通じる思想

東洋経済オンライン / 2025年1月20日 13時0分

mendacem memorem esse oportet「嘘つきは記憶が良くなければならない」(写真:Hiro/PIXTA)

古代ローマを描いた『テルマエ・ロマエ』などで知られる漫画家・随筆家のヤマザキマリ氏と、古代ローマの公用語であったラテン語を研究し、Xでも人気のラテン語さんが、2人の共通の話題である古代ローマやラテン語をめぐって対談しました。ヤマザキ氏は、クインティリアーヌスの『弁論家の教育』に三島由紀夫に通じるものがあると指摘します。2000年の隔たりを感じさせない、時代を貫く思想とは?

※この対談は2人の共著である新刊『座右のラテン語』からの抜粋です。

嘘つきのすすめ?

mendacem memorem esse oportet「嘘つきは記憶が良くなければならない」

ヤマザキ:この言葉は、三島由紀夫が『不道徳教育講座』という本に書いていた一節に通じるものがあります。彼は確か、本当に頭がいい人じゃないと嘘はつき通せないと書いていたはずです。ばれない嘘、破綻のない嘘はメンテナンスが難しい。

確かに、真実のほうが想像力を駆使しなくていい分、よっぽど簡単です。そもそも嘘というのは想像力によって作られるものですからね。三島の捉え方はこのラテン語に通じるところがあるように感じました。

ラテン語さん:クインティリアーヌスという修辞学者の『弁論家の教育』という著作に出てくる文章です。

ヤマザキ:弁論というのは、実はハッタリが大事だったりするわけです。あることないことを、説得力を交えて力強く説く。だから聞いてる人も半信半疑なんだけど、それをいかに面白く伝えられるかどうかが評価の基準となる。

イタリアの学校での口頭試問なんてまさにそんな空気でした。私の愛するプリニウスの『博物誌』も、見てもいないものをさぞ見てきたかのように書いていますけど、あれはあれでいいんですよ。読む人も、そこに絶対の信憑性なんて求めてませんから。半分洒落だと思って面白がっていればいいのです。

なぜ嘘をついてはいけないのか

ヤマザキ:アメリカ大統領選の候補者のスピーチなんかも、大言壮語に古代からの弁論の感じが出ている気がしますね。真実よりも、いかにインパクトのある言葉で民衆の注意力を集められるか。

ラテン語さん:クインティリアーヌスが言っているのは頭の良さ全般というより記憶力なので、三島由紀夫とはまた少し違いますが、ある人にAを言い、また別の人にはBと言ったというような嘘の記録を覚えて破綻がないようにするのは難しいでしょう。

ヤマザキ:そうなると、やはり記憶力だけではなく、テクニックを要するので、頭脳を駆使しないとうまくいきませんよ。浮気の言い逃れなんかは典型例ですよね。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください